第667話 暗躍する姫巫女 第三者SIde
――南極、ボストーク基地跡。
ボストーク湖は琵琶湖の20倍以上の面積を有していた。
そんなボストーク湖の30%の面積を占めるまでに姿を現した巨大な平べったいエイの形をした建造物。
それは湖底から姿を現したモノであった。
平べったい建造物には、高さ600メートルを優に超える巨大な黒い塔があり、その塔の一角に、シュド=メルは姿を現した。
「お前たちは、他の同胞の覚醒を手伝うように」
「はっ! それでシュド=メル様は、どちらへ?」
「アザートス様に会いに行ってくるわ」
「分かりました」
建物の中で、部下たちと別れて一人、塔の中を下っていくシュド=メルは、唐突に歩みを止めた。
「どういうつもりかしら?」
シュド=メルの前に、いきなりと言っていいほど現れたのは、神社庁の巫女姫であった。
「お久しぶりです。シュド=メル様」
「世事はいいわ。それよりも、貴女には聞きたい事があるのよね? あの娘が、安倍晴明だという事を貴女は言ったらしいじゃないの」
「……」
シュド=メルの問いかけに巫女姫は、美しく細工の入った紅色の扇を手に口元を隠しながら、無言になる。
「どういうことかしら? 私達の宿敵である安倍晴明。その転生体の情報に虚偽があること。これは大問題よね?」
「はて? 何のことでしょうか?」
そこで、巫女姫は惚けた口調で言葉を呟く。
その声色に、シュド=メルの額に青筋が浮かぶ。
「ティンダロスに、カラカル。同胞が、殺されたのは、巫女姫! 貴女の虚偽が問題だと私は指摘しているのよ」
「そのことですか……」
アッサリと、シュド=メルの言い分を認める巫女姫。
「そうよ! このことは、盟主アザートス様に、伝えさせてもらうわ!」
「それは困りましたね……」
ぽつりと呟く巫女姫。
それと同時に、全身が総毛立つ感覚をシュド=メルは覚えると階下へと降りていた階段を数段飛ばし降りしたあと、巫女姫を見る。
「本当に、困りました。厄介ですね。その力――」
「巫女姫……。貴女、私に殺気を向けたの? 主人である私達に向けて?」
シュド=メルは、常に畏まってきた巫女姫が、唐突に自身すら震撼させるほどの殺気を向けてきたことに驚きを隠せずにいた。
「これは、きちんと処理しておかないと駄目ですね」
そう巫女姫が口にした途端、シュド=メルの身体が細切れに両断された。
そこには巨大な3メートル近くの特殊合金製の戦斧すらも含まれていた。
「あっ……」
唯一、シュド=メルが発することが出来た言葉はそれだけであった。
彼女は、最後の呼吸をするかのように音を吐き出していた。
ただ、それは空しく声にならない――音にならないモノで――。
圧倒的な力を有していたシュド=メルが何の反応も出来ず、何の知覚もできずに、瞬時にバラバラになり、その体の破片とも言えるモノは、血を含めて床を穢す前に大気に掻き消える。
「本当に、面倒ですね。神楽坂都は必ず殺して貰わないといけないのに……」
そう呟いたと同時に、無数の肉片が巫女姫の頭上から降り注いでくる。
それら肉片も、巫女姫の身体に触れる前に大気に溶けるように消えると、巫女姫は空間上にゲートを作り出し姿を消した。
そう、桔梗たちと戦った全ての存在を皆殺しにしたあとに。
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