第655話 峯山純也の回想(3)第三者Side
「峯山純也君だね?」
走って近づいてきた刑事が、峯山純也に語りかけた。
「あ、はい……。そうですが……、貴方は?」
「ああ。申し訳ない。私は千葉県警察本部の竜道寺(りゅうどうじ)幸三(こうぞう)という」
そう純也に自己紹介した純也よりも一回り以上、背丈が高く横幅に至っては2倍近くある男は純也を見おろしながら自己紹介をした。
ただ、その威圧感は一般的な人間から見たら身構えさせるには十分。
「じつは事件が起きて霊能力者に事件を見てもらおうと思って探していたんだ」
「霊能力者に?」
「ああ。今、時間は大丈夫だろうか?」
「待ってください。どうして自分に?」
純也は、いきなりの刑事からの提案に困惑しながら、刑事に対して不信感が芽生えていた。
さらに都の件も解決していないのにと苛立ちも募っていた。
「どうしてって……、君しか君を連れていくようにと神谷警視長から命令をされていたからだが……」
「神谷さんに? それよりも事件を見て欲しいって、いま1階で大勢の人達が行きかっている何かですか? それに関係あるんですか?」
「さすが、感は鋭いな」
純也の質問に竜道寺は、満足そうに頷く。
「じつはセンチュリータワービルがテロリストにより爆破されたんだ」
「センチュリータワービルが!?」
元、大手デパートが建てた高層ビル。
それは千葉駅前のシンボルである事は千葉市民なら、そこそこの人間が認知していた。
「ああ。すでにロシア国籍のテロリストから爆破予告が出ている」
「それで、俺にはどういうことを?」
「桂木警視監が見落としている部分を調べてほしい」
「優斗が現場に行っているんですか?」
「ああ。だが、事件の概要が彼では分からなかったらしい。そこで霊能力者に確認してもらった方がいいのでは? と、神谷警視長は考えたようだ。事実、何か不可解な事件が起きたときには、神社庁や陰陽庁に依頼をかける時があったからな」
「そうですか……。優斗が……。それで犠牲者が出ているんですか?」
「ああ。良ければ、その……犠牲者の霊――、霊というのは俺は信じていないが、君は見えるんだろう? 神社庁の人間に訓練を受けているという事は……」
「まぁ……」
「――では、協力してくれるという事でいいか?」
「分かりました……。――で、何人くらい犠牲に?」
「それは――」
途中まで竜道寺は言いかけたところで口を閉じた。
緊急の用ということで地下まで走って降りてきた彼であったが、要件を済ませたところで一息ついた彼は、ようやく回りを見る余裕が出来たわけで――、そんな彼の視線の先には、センチュリータワービルが爆破された時に、死亡した遺族の少女が立っていたからだ。
「どのくらい亡くなられたか詳しい状況が分からないと俺も桔梗さんも困るんですが……」
純也は、都の件もあったので、承諾はしたが断りたいという気持ちがあった。
だからこそ、断る口実を探していたが……。
「テロ……リスト? お父様は、テロリストに殺されたってことですか!」
竜道寺の話を聞いていた都は空虚な――、何の感情も映していない目で竜道寺を見ながら声を荒げたのだった。
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