第639話 死神からの宣戦布告(3)

 そう思考したところで、空中回廊の花壇近くのベンチに腰を下ろす。

 

「都を狙う相手は、あいつらか……」


 南極の問題もあるし、また面倒な事になってきたものだ。

 あとは――、


 ――トウルルル


 別のことを思考しようとしたところで電話が鳴るが電話に出た途端に通話が切れるが――、


「山崎の携帯か?」

「そう。幸太郎の電話じゃ」


 声のした方へと視線を向ければ、そこには伊邪那美が立っていたが……。


「なんだ。その服装は……」

「パンク・ファッションと言って欲しいのう」

「日本の神様なんだから、ロックっぽい服装はどうなんだ?」

「別に良いではないか。それに仕事着でもあるからの」

「そうか」

「それよりも、随分と大ごとになっているようじゃな」


 伊邪那美が、瞳をスッと細めると上を見上げる。


「ああ。どうやら異星人が攻撃してきたらしい」

「異星人?」

「本人たちは言ってないが、そんな感じだな」

「ふむ……。相も変わらず面倒ごとに巻き込まれているのう」

「俺は平和に暮らしたいのにな」


 肩を竦めて答える。


「――で、桂木優斗。妾に、何のようじゃ?」

「もう分かっているんだろう?」

「そうじゃな」

「それよりも、ここまでかなりの数の警察官が検問や見回りをしてたと思うがよく捕まらなかったな?」

「――ん? 何を言っておる。普通の人間が、神たる妾を認識できるはずがないじゃろうに。普段は、普通の人間が目視できるようにしているだけじゃ」

「なるほどな……」


 どうりで、向こうから声をかけられるまで俺が伊邪那美の存在を認識できなかったはずだ。

 おそらく、霊力か魔力と言った超常的な力が無いと感じることすらできないのだろう。


「だから、お主にも認識出来ていなかったであろう?」

「まあな……。それよりも、お前の存在を他の人間に見られるのは不味いと思っているから好都合だな」

「ふむ。それは、妾は同意見ではあるな」


 ベンチから立ちあがり、センチュリービルの方へ向かう。


「とりあえず、伊邪那美」

「なんじゃ?」

「ついてきてくれ」

「ほう」


 エレベーターに乗り最上階まで移動する。

 すると数十人規模の警察官に、10人近くの消防の連中が現場で調査をしていた。


「桂木警視監!」


 エレベーターから降りたところで、何人かの警察官と目が合う。

 すぐに警察官が駆け寄ってくると啓礼してきた。


「どうした?」

「先ほどの指示どおり、ご遺体を集めておきました!」

「ご苦労」


 先ほど、警察官に指示した場所へと移動する。

 そして、集められた遺体を目にするが、特徴的な傷口がある遺体は一体だけ。

 他は、ナイフで首を斬られたと思わしき死体しかない。


「修二だけが、首を切断させられたってことか……」

「ほう……。これは、なかなかに特徴的な死体じゃな」


 並べられている死体を鑑賞するかのように眺めていた伊邪那美が修二の首の傷口を見てから、俺の方を向いてきた。


「桂木優斗」

「何だ?」

「この者の傷口だが、刃物で切られたという形ではないの」


 修二の首の切断面。

 そこは刃物で斬ったと思えないほど鋭利に何かで切断させられていた。




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