第628話 神楽坂修二との対話(1)

「まぁ、危険も何も、こちらに喧嘩を吹っ掛けてきたから敵対なんだがな……」


 俺は、牛乳を飲み呟く。


「マスターの力なら敵対した奴の本拠地とか分からない?」

「俺の力も万能ではないからな」


 まだ完全に力を取り戻してないし。

 今だと、全盛期の7%程度の力くらいしか出せないからな。


「そうなの?」

「ああ。そうだ」

「ふーん。マスターも大変なんだね」

「そうだな」

「そういえば、マスター」

「今日、神楽坂から電話があった」

「電話? 俺の携帯電話には掛かってきてないが?」

「男の人からだった」

「男? ――と、なると……、都の親父からか? 胡桃には?」

「言ってない。あまりいい感じしなかったから」

「そっか」


 俺は、台所で何かを作っているであろう妹の方へと視線を向けるが、死角になっている事から何をしているのかまでは分からない。

 まぁ、神眼を使えば把握することは容易だが、そういうのは使いたくないからな。


「ちょっと電話してくるわ」

「分かった。胡桃には、マスターが仕事の電話のために外に行くって言っておく」

「頼んだぞ」


 胡桃にバレないように、ベランダに通じる掃き出し窓をスライドさせてから外へと出る。

 そして、ベランダから腕の力だけで屋上まで飛ぶ。

 屋上に到着したあと、俺は神楽坂家へと電話を入れ――、数コール鳴ったところで受話器が取られた。


「はい。神楽坂です」

「桂木優斗です。神楽坂さんより連絡を頂いたようですが、静香さんか修二さんはご在宅ですか?」

「旦那様か奥様ですね。少々お待ちください」


 どうやら電話に出たのはメイドの方だったようで――、しばらく電話口で待たされたところで、


「神楽坂修二だ。待たせてしまって申し訳ない」


 どうやら、都の親父さんに連絡がついたようだ。


「優斗です。電話とかもらいましたか?」

「ああ。少し会って話をしたいんだが、どうかね?」

「構いませんが? どちらで会いますか?」


 神楽坂の親父さんとは、携帯電話番号を交換していない事に今さながら気が付くと共に、どうも親父さんの様子から見て都には聞いてほしくない内容だという事を察する。

 都が知ってもいい内容なら、都に俺の携帯電話番号を聞いて直接電話してくるだろうし。


「話が早くて助かる。嫌いな食べ物などはないかな?」

「とくには――」

「そうか。以前は、苦手なモノなどがあったと記憶しているが……」


 そう都の親父さんが言ってくるが、異世界で何十年も暮らしていたのだから、好き嫌いなんてしていたら生きてはいけない。

 そのへんは、異世界に召喚されて数年で克服済みだ。

 まぁ、いまは何でも喰えるまであるが。


「好き嫌いなんてしてはいられないので。それでいつ頃に?」

「今からでも大丈夫だろうか?」

「別にかまいませんが」

「そうか、わかった。すぐに車で迎えにいくから、公団住宅前で待っていてもらえるか?」

「分かりました」


 そこで電話を切る。

 

「――さて、直接、俺と話をしたいってことは何か意図があっての事だと思うが、何かあったのか?」


 ここ最近、都の親父さんとの仲は決して宜しくない。


「まぁ、来てからのお楽しみってところか」




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