第626話 そうだ! 京都へ行こう!(2)
溜息が電話口から聞こえてくる。
そして――、
「それで、チケットは、峯山氏が使われるのですか?」
「一応、そういう事になるな」
「そうですか。ただ、杞憂が一つあります」
「どういうことだ?」
「今、桂木警視監と、峯山氏の関係性は、お世辞にも良いとは言えません。そんな中で、京都までの移動を同行を快諾するとは思えません」
「たしかに……」
だが、純也の戦力の強化は、特殊な能力を持つ以上、いつ理不尽に巻き込まれるか分からない以上、必須だ。
そのためには、鞍馬山の烏天狗と合わせる必要があるだろう。
「そこで! 山王高校で、学年単位での修学旅行というのは如何でしょうか?」
「修学旅行か……。だが、まだ新学期が始まったばかりで修学旅行は難しいんじゃないのか?」
「早ければ4月から修学旅行を行う学校もあります。そのために時期的には問題は無いかと思います」
「なるほど……。それなら、学校の行事という事で、都も連れていけるな」
「はい。ただ――、妹さんの同行は別口と言う事になりますけど……」
「それなら中学校の方も、学校の行事ってことで」
「分かりました。それでは、文部科学省と千葉県教育委員会に働きかけておきます。日本政府を介してなら、国家公務員ですからNOとは言えませんから」
「それじゃ、それで頼む」
「畏まりました。それでは日程調整が済む次第、桂木警視監に連絡いたします」
そこで、電話が切れる。
そして視線を再度、神楽坂邸へと向ける。
すると一台の車が邸宅に入っていくのが目に入る。
「静香さんが、家の外に出ているなんて珍しいな」
普段は、家にほぼ常駐していると言ってもいい都の母親が車で出かけて戻ってくるのは珍しい。
何より、俺が神楽坂邸を警護し始めてから静香さんが家から出て行った記憶がない。
つまり、俺が警護する前に静香さんは既に外出していたという事になる。
「少なくとも2日間。下手すると3日以上、外出していたことになるのか」
しばらくすると都の父親も帰宅したようで、それは此処2日間で同じルーティンであった。
それから、1時間ほどで家庭教師らしき女性が家から出てくる。
「そういえば、勉強が遅れるからって家庭教師を雇うって、言ってたな……」
ふと、思い出し口にしたところで、背後に気配が生まれる。
それは俺が良く知っている人物で――、
「ご主人様」
「白亜か」
「はい。肉体と精神の復旧が済みました。これより、神楽坂邸の警護に復帰します」
「分かった。あとは、任せたぞ?」
「はい。お任せください」
白亜と入れ替わるようにして、俺は帰路についた。
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