第625話 そうだ! 京都へ行こう!(1)

 白亜を公団住宅の屋上に置いたあと、俺は神楽坂邸を少し遠目に確認しながら病院の屋上で休息をとっていた。

 そして2日ほどが経過したところで――、


「お兄ちゃん!」


 携帯電話が鳴り、電話に出ると妹の胡桃から御怒りの電話が来た。

 

「ど、どうした? 胡桃」

「どうしたも何もないの! 2日間も、どこに行っているの!」

「少し出かけるって電話はしただろう?」

「――でも! どこに出かけているかは言ってないよね!」

「そ、そうだな……。だが、俺も警察の高官という立場場、細かいことを説明するのは問題があってだな……」

「お兄ちゃん……」

「分かった! 今日、帰るから!」

「白亜さんに聞いても何も教えてくれなかったから! ほんとにもー!」


 そこで俺は電話を切る。


「まったく……。戦場よりも大変だな……。妹の機嫌を取るのは……」


 俺は千葉大学医学部附属病院の屋上に座り込み、壁にもたれ掛りつつ溜息をつく。

 自宅へ俺が戻っていない理由は簡単で――、白亜と戦闘をした連中が襲撃してきてもすぐに対応できるようにするために臨戦態勢で神楽坂邸の警護をしていたからだ。

 代わりに白亜には、自宅での胡桃の警備をエリカと共に従事してもらっている。


 ――トウルルルル


「優斗だ」

「神谷です。まだ神楽坂邸の警護をされているのですか?」

「まあな……。――で! 今回の事件だが……」

「千葉県警察本部と日本政府の見解としては、不発弾の処理という形で話はまとまりました」

「建物が爆発した事も未確認の不発弾の爆発と言う事で処理するって感じか?」

「そういう事で、今はニュースが流れています」

「そうか……。――で、神社庁からは話は降りてきたか?」

「神社庁からは、未確認の生物という事で情報提供が来ています」

「ふむ……」


 神社庁が、襲ってきた連中の情報を持っていないという事は、記録に無いということか……。

 敵の正体を無理矢理にでも調べておくべきだったか。

 まぁ、いまさら考えたところで、後の祭りだが。


「それと日本政府と国連からも南極大陸での異常気象についての調査は『まだか?』と、再三の確認連絡がきています」

「……それがあったか……」


 まったくやる事が山積み過ぎる。

 せめて、純也が戦力になるのなら、俺が日本から離れてもよかったんだが……。

 今の状態だと、きついな。

 俺は、買い物から戻ってきたであろう都の姿が、神楽坂邸に入っていくのを確認したあと立ち上がる。


「神谷」

「はい」

「京都の鞍馬山に行く」

「え? 南極大陸の調査は?」

「それは、あとだ」

「絶対に国連から文句を言われるとおもいますが……」

「分かっているが、後手に回っている状態だからな。色々と――」


 星の守護者の動向も気になるし、やはり早急な戦力強化は絶対必要だ。


「……分かりました。それでは、京都までのチケットを一枚、取得しておきます」

「一枚じゃない」

「え? も、もしかして……」

「6枚用意しておいてくれ」

「……それって、私の分は……」

「入ってないな」

「ですよね……」





 

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