第598話
電話が終わり、座っていた椅子の背もたれに身体を預けて目を閉じる。
そして、純也に陰陽を指導できる人物を考えるが、安倍晴明の式神について詳しい人間について心当たりがまったくない事にきがつく。
「――さて、どうしたものか……」
持っている力を振るう術を知らなければ、それは宝の持ち腐れに他ならない。
思考しているところで、扉が開き神谷が戻ってきた。
「いま戻りました」
そう報告しつつ、俺の前へと立つ神谷。
「どうかしたのか?」
「報告を――、長野県警本部長からご協力に感謝するという事です」
「そうか」
まぁ、六波羅命宗と、創価命宗の暗い繋がりの情報を渡したのだ。
テロリストを警察の手で検挙できる可能性が出来たのなら、今回、長野県警や諏訪警察署の失態を取り戻す事も出来るだろう。
何しろ、創価命宗は日本でも最大派閥のカルト宗教団体で、仏教や神教から破門されているらしいし。
「それと、桂木警視監。こちらを――」
神谷が手に持っていた分厚い資料を俺に寄こしてくる。
「俺に関係のある事か?」
「はい」
「そうか……」
神谷から受け取った資料に目を通していく。
そこには、伊邪那美に力を借りて生き返らせた多くの人間の顔写真と名前が掲載されていた。
「これは?」
「六波羅命宗の跡地から救出された人たちと、桂木警視監が治療を行ったことで助かった方々のリストになります」
「そのリストが、どうして俺のところに?」
「これらは、国からの確認になりますが、事後処理を行ってほしいと」
「事後処理を?」
「はい。今回、助かった人たちの数があまりに多かったため、警察組織だけでは人員が足りていないという事で、内閣府直轄特殊遊撃隊にも依頼がありました」
「それは、見つかった行方不明者の社会復帰を手伝ってほしいという事か?」
「ひらたく言えば……」
「また、厄介だな……」
「それで、どうしましょうか?」
「金が出ればやるが、出ないならやらない。国から補助金は一切もらっていないからな。それに今回、依頼された仕事の内容は諏訪市近辺の行方不明者に関する問題であって、アフターまではサポート圏外だ」
俺は、分厚い――、神谷が持ってきた資料をテーブルの上に置きながら答える。
「――では、そのように日本政府には伝えておきます」
「ああ、頼んだ。金額については応相談というところだな」
「分かりました。それでは続きまして奇跡の病院の件ですが――」
神谷が、自身の机まで戻り、俺の元へと戻ってくるとファイルを差し出してくる。
そのファイルには、奇跡の病院の開業日など、雇用したスタッフが事細かく書かれていた。
「これは、また大変な仕事だな……」
「はい。ただ――」
「分かっている。内閣府直轄特殊遊撃隊の1万人の職員を喰わせないといけないからな……」
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