第594話 来訪者と星の守護者(2) 第三者視点
「命令が人間を滅ぼすことね……」
イシュラエルは、金糸の如き自身の髪に手を添えると、感情を無くした声で、そう呟く。
「気にいらないのか? 星の守護者よ」
ニャフルガは、目を細めると舌なめずりしつつイシュラエルへと話しかける。
男に問われたイシュラエルは、目を細める。
「人を滅ぼすことに関しては、私たち星の守護者は止めたりはしないわ」
「――なら、問題はないな」
「いえ。問題はあるわね。そもそも問題が無いのなら、ここまで私が出向くことはないのよね」
「ほう……。問題が無いというのに、問題があると? どういう理屈か聞かせてもらいたいものだ」
イシュラエルを見下すような物言いをするニャフルガは、指を鳴らす。
その途端、部屋の色が透き通った白一色へと変化し、椅子らしき大理石が姿を見せた。
それは、物質合成であった。
分子結合を難なく行ったニャフルガは、大理石に座ると足を組み、イシュラエルへと椅子へと座るように手のひらを返した。
「星の生態が崩れると言っているのよ? 来訪者」
イシュラエルは、用意された四方体の大理石の台座に座ることなく淡々と呟く。
「星の生態ね……。そもそも、すでに星の生態バランスは崩れているはずだ。お前たちが、人間を管理できなかった時点でな。それともソロモン王と、安倍晴明に封印されていたからと言い訳をするつもりか?」
「……言い訳はしないわ。でも、星の環境バランスを破壊してまで人間を滅ぼす行為については、星の守護者たちは了承していないから」
「やれやれ――」
話しがまったく噛み合わないとばかりにニャフルガは肩を竦めた。
「そもそも、お前たち星の守護者は、我々が作った人間たる器へと寄生した星の意思のようなモノだろう? つまり、人間の生殺与奪の権利を所持しているのは我々であり、お前たち寄生体である星の守護者に何か言われる謂われはない。まして、地球の環境と言うが、たしかに、地球の環境は激変するかも知れないが、100億近い寄生虫どもを根絶やしにすれば数千年後には、地球は元の文明の存在しない世界へと回帰している」
「そして、今度こそは来訪者たるあなたたちが、人間に代わって星に寄生すると?」
自嘲気味に呟くイシュラエル。
そんな言葉に、眉間に皺を浮かべたニャフルガ。
「いま……、なんと……、……言った? 器に寄生せし星の守護者よ」
「今度は、来訪者である貴方たちが星の寄生するのか? と、聞いたのよ?」
「――取り消せ。その言葉は、我々、全ての人類を侮辱する行為だ! 貴様ら、作られた器に寄生する意識の分際で、大言壮語も甚だしいぞ!」
「そう。でもね、この星は、来訪者を認めてないの。この星は、私たちの大いなる母のモノなの。別の惑星から、来訪してきたモノにとやかく言われる筋合いはないわ」
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