第593話 来訪者と星の守護者(1) 第三者視点
――各国が現在目下、注目している南極エリア。
その中でも、一際、異彩を放っているのがロシアが擁していたボストーク基地周辺であった。
本来であるのならボストーク基地周辺の氷は、南極大陸を4キロ覆っていたが、それらは、今ではまったく存在していない。
直径100キロを超える巨大な穴が出現しており、穴の縁からは解凍され続ける水が落差4000メートルという高さから、降り注いでおり、地底湖であったボストーク湖へと流入していた。
そんなボストーク湖の中心部。
そこには、直径30キロほどの円筒の黒い建物が存在していた。
円筒の建物には、窓のようなモノは一切存在しておらず、卒業証書を黒く塗りつぶしたような形をしている。
高さは2キロを優に越しており、まったく光を反射してもいない。
それは明らかに南極大陸に存在していて、異質なモノであった。
そんな建物の上空には4人の人影が浮かんでいた。
それぞれ2人ずつで纏まってはいたが――、その服装は対照的であった。
一組の男女は今風の若者の恰好をしていたが、もう一方は共に男ではあったが、二人とも麻を簡素に編んで作られた短パンだけを穿いていた。
「待たせてしまって申し訳なかったな。星の守護者よ」
ニャフルガが、気を利かせるように男女に話しかける。
ただし、人間離れした容姿――、全てが真っ白で色の無いニャフルガという男は、どこまでが本当のことを言っているのか分からないところであったが。
「いえ。それよりも、この状況はどういうことか説明してもらえるかしら?」
ニャフルガに話しかけられた女は、険のある表情で、言葉を紡ぐ。
それに対してニャフルガは、「我々が、行動する上で必要なことだ」と嘯く。
「イシュラエル様に向かって、何と言う口の利き方だ!」
「黙りなさい。サルベージ」
「はっ! 申し訳ありません! イシュラエル様」
イシュラエルと呼ばれた女性は、人間の基準で言えば超絶美少女の部類に入るほどであった。
腰まで届く長い手入れの行き届いた金髪に、大きな青い瞳。
そして、若干、小麦色がかった健康そうなメリハリの均整の取れた肢体。
横を通り過ぎれば10人が10人とも足を止めて話しかけるほどの優れた容姿。
「それで、どういう意味で星渡りの舟の氷床を融解させているのかしら?」
自身の部下であるサルベージを黙らせるとイシュラエルは、自身の目の前に浮かんでいる生き物へと話しかけた。
「やれやれ――、人間を滅ぼす為だ」
「今することなのかしら?」
「そう決まった。これは、我らが母であり神でもあるアザートス様のご命令だ」
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