第583話 国連本部(21)第三者Side

 ロシア代表の言葉に、溜息をついたアメリカ大統領は、手元のリモコンを押す。

 すると国際会議場に巨大なモニターが運び込まれてくる。


「流してくれ」


 アメリカ大統領の指示の元に、大画面のモニターに、南極大陸北方で発生したロシア海軍と、アザートスの部下との戦いの映像が映し出される。

 それは、衛星軌道上から撮られたモノであり、その映像がたった一人の人間に、ロシア艦隊が壊滅させられていく様子が映し出されていた。


「本当は、このような映像は、各国の混乱を招くから見せたくはなかった」


 そうアメリカ大統領は前起きをする。

 ロシア代表は、アメリカ大統領の話を聞きながらも、モニターに映し出された自国の海軍が壊滅していく様子を、目を見開いたまま見ており、


「――ば、ばかな! ど、どういうことだ? これは、編集映像だろう!?」


 我に返ったロシア代表が自身を納得させるかのように大声を出すが――、その様子に各国の代表も、どうしたものか? と、考えていた。

 何せ、人がロシア海軍を一方的に蹂躙した様子が映像として映し出されていたからであった。


「編集? 我がアメリカが、そのような事をすると本当に思っているのか? ここは、G20が集まる場であり、発言には責任が伴う。そのような場で嘘を並びてるような真似をすると本気で思っているのか?」

「――だ、だが! 我がロシアの海軍が一方的に――。しかも破壊された手段が――」

「ふむ……。――では、説明しよう。ロシア海軍を一方的に破壊したのは、太陽光を収束させたレーザーとの見解だ」

「太陽光を収束だと!? そんな兵器、聞いたことがない! 第一、そんなモノは効率が――」

「だが、実際に、ロシア艦隊は壊滅している」

「ありえない! ありえない! ありえない! そんなことは――!」

「――では、確認をしてみればいいのではないのか?」

「いいだろう!」


 携帯電話の電源をONにしたチャレンコフスキーは、番号を打ち込み電話をかける。 

 そして数コール鳴ったところで取次に繋がる。


「俺だ! 大統領に! モスドル大統領に代わってくれ! 大至急だ! ――何!? いま、忙しくて変われない? 大統領に、ロシア海軍が――、南極に向かったロシア海軍があったかどうかだけ確認してくれ! そして、その我が祖国のロシア艦隊が壊滅したのかを! 何? 答えられない? ふざけるな! 俺を誰だと思っている! いま偉大なる祖国ロシアを、アメリカ大統領が侮辱しているのだぞ! すぐに確認を取ってくれ」


 ロシア代表は、口早く電話口相手に要件を伝えると、無言になる。

 その時間は10分にも満たない時間であったが――、「私だ。チャレンコフスキー・エルガ君。一体、何事かね?」と、電話口から聞こえた声に、ロシア代表が居住まいを正す。


「これは、モスドル・プーチン大統領閣下!」



 


 



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