第581話 国連本部(19)第三者Side

「はぁー」


 全員の視線が、溜息を漏らした人物へと向けられる。

 その男は、アメリカ大統領であった。

 彼は、深く溜息をついたあと、韓国の大統領を睨みつける。


「君は、国際会議の場で決められた事を守るつもりはないと――、そういうことかな?」


 あまりにも身勝手な行動をとる韓国大統領キム・ヨヌイに向けて、ジョージ大統領が威圧を含めた問いかけを行う。

 

「――だ、だって! 日本だけが、奇跡の病院を持つのが悪い! それに反物質なんてモノを作れる神の力を有している存在を保有しているのもありえない!」

「だから言っただろう? 国連は、かの者には不干渉だと」

「日本だけが特をすることが許せない! 日本は、我が大韓民国に大きなツケがあるはずだ! 謝罪と賠償を請求する! だから桂木優斗という化け物をすぐに引き渡せ!」


 顔を真っ赤にし、血管が切れそうなくらいに火病を発症している韓国大統領。

 その彼に冷や水をかけるかのように冷静に「答えは出来ないだ」と、語り掛ける日本国首相は、椅子から立ち上がると韓国大統領に近づくと、椅子に座っていた韓国大統領の後ろに立ったかと思うと頭に手を置き、そのまま力任せに韓国大統領の顔面をテーブルに叩きつけた。


 鈍い音とテーブルの上に置かれていた水の入ったペットボトルが跳ねると、横倒しになる。

そしてペットボトルはコロコロと転がっていきテーブルから落ちると床に当たると鈍い音を立てつつ何度か跳ねる。


「何度も注意したはずだ。我が日本国民を化け物だと侮辱するなと――」

 

 能面のように感情を露わにせず、夏目総理は韓国大統領から手を離すと、自身の席へと戻っていく。


「――な、なにを……日本人が……日本人が! 偉大なる大韓民国人に手を挙げたというのか……、そんなことは許されない。許されてはいけない。日本人が! 日本人が! 日本人が!」


 韓国大統領は、ゆらりと椅子から立ち上がると懐から10センチほどのナイフを取り出すが、それは各国の代表からは影になっていて確認することは出来なかった。

 キム・ヨヌイは、視野狭窄しておりナイフを手に持ったまま、日本国の代表が座る席へと戻る夏目首相へと走って襲い掛かった。

 その瞬間を誰もが見ることが出来たが、日本国首相と韓国大統領の距離は近く誰にも止めることはできない距離であった。


「お前が! 日本人が! 偉そうにしているのは悪いんだよおおおおおお!」


 韓国大統領がナイフを、日本国首相の首に振るうが、そのナイフの切っ先は、夏目総理の手のひらで受け止められていた。


「――なっ! ば、ばかな……。ナイフの切っ先が皮膚に刺さらないだ……と……ぶはっ!?」


 驚き目を見開いた韓国大統領の体がクの字に曲がる。

 それは夏目首相が左手でナイフを受け止めて右手でボディを打ったからに他ならなかったから。

 そして、その一部始終は夏目首相の影になっていて各国の代表は目撃することはできなかった。

 意図的に、夏目首相が、そのように立ち回りをしたからであったが――。


「言っておくぞ? キム・ヨヌイ。お前じゃ届かないんだよ。この世界の本当の真理を知らないやつにはな」


 意味ありげな言葉を聞きながら韓国大統領は意識を失い、その場で倒れこんだ。

 


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