第580話 国連本部(18)第三者Side

「それでは、常任理事国全会一致という事で、神の力を有する桂木優斗には不可侵という事でよろしいか?」


 話がひと段落着いたところで、アメリカのジョージ大統領は確認するかのようにG20の面々を見て告げる。

 それに対して常任理事国から転落したロシア、そしてロシアとエネルギー問題で繋がりのあるドイツ、さらに力で押さえつけようとしていたフランス、最後に苛立ちから手を震わせ顔を真っ赤にし額に血管まで浮かべていた韓国大統領は、頷く他なかった。


「――では、桂木優斗については、国連と全ての国々は一切の不干渉とする」

「ジョージ大統領っ!」

「何かな? キム・ヨヌイ大統領」


 話が、ようやく纏まりかけたところで冷や水をかけられたと思ったアメリカ大統領は、眉間に皺を寄せながら韓国大統領に笑顔を向ける。

 ――が! その目は一切の笑みを内包してはいなかった。

 射殺すような視線を韓国大統領に向けたアメリカ大統領は、韓国大統領に問いかけるが――、


「武力での不干渉という意味なら分かります」


 その韓国大統領の言葉に、常任理事国の面々は呆れた表情を浮かべる。

 不干渉なのだから何かあっても国連と国連に所属する国々は一切の交渉を持ってはいけないという事くらいは書いて字のごとくであったのにと。

 ただ一人、韓国大統領だけは不干渉という意味を完全には理解できてはいなかったのである。

 それは、韓国という国の特性上、人の話を聞かない。

 自己都合で、自分さえ良ければいい、他人が決めたルールは守らないが自身の決めたルールすらも守らないという情緒国家という国際ルールすら守れない国であったからこそであった。


「キム・ヨヌイ大統領。不干渉というのは一切の接触を持たないという意味だ」

「意味が分かりません! そもそも取引ならば不干渉の定義には当てはまらないはずだ! 桂木優斗を雇用する為の交渉は許可を出すべきだ! あんな化け物を! 日本が持っているなんて、それだけで世界への冒涜だ! 日本は敗戦国であり! 韓国は戦勝国! 我が大韓民国で! あの化け物を管理するのが当然の権利である!」

「はぁー」


 まったく、言葉が通じない韓国大統領の言葉に露骨に溜息をつくアメリカ大統領。

 目の前の男は幼稚園児か何かなのか? と、ジョージは考えつつ口を開く、。


「これは常任理事国と、先ほど反対しなかった韓国も賛同したことだ。桂木優斗には国連と参加国は不干渉を貫く。もし守れない場合には経済制裁を行う」

「――ッ! そんなのは横暴だ! そうだろう! 各国の代表の皆さん!」


 叫ぶと同時に韓国大統領はガタッと音を立てて椅子から立ち上がって全ての国々を見るが、どこの国も目を逸らした。

 目を逸らした理由は簡単であった。

 桂木優斗のスペックを見せられた上で交渉をする。

 下手に相手を刺激したら国が亡びる。

 爆弾解体を自身の手でするなぞまっぴら御免だ! という国々ばかりであった。

 そんな中、逆に桂木優斗に交渉をする! と、叫んだ韓国大統領キム・ヨヌイは違う意味で頭のネジが数本飛んでいた。








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