第579話 国連本部(17)第三者Side
「……」
無言になったフランスのエマロエル大統領へと話しかけたあと、ジッと日本国首相である夏目はジッとエマロエルを見つめる。
「うぐっ!」
フランス大統領は、歯ぎしりしながら夏目首相を睨みつける。
「――つ、つまり……。こ、この私が、桂木優斗の近しい者に手を出せば……、実行者でなくとも……。命令であったとしたら……」
「桂木優斗に殺されると思いますよ。彼の性格からして――」
「まさか……国のトップである私を? せ、戦争に、なりかねないぞ!」
「言ったでしょう? 彼は、神の力を有していると……」
「――ッ!」
「もう一度、言いますよ? 桂木優斗の能力は判明しているだけでも、空を音速の数倍の速さで移動し、銃弾を弾くどころか核ミサイルでも殺すことは出来ず、肉体は超高速で再生し、反物資を砲弾で放つことが出来る。そして桂木優斗という少年は、敵対した相手には徹底的に報復を行います。そんな少年に手を出すなんて普通はできませんね」
小馬鹿にしたような動作で、フランス大統領に忠告する日本国首相の言葉。
さあに夏目の言葉は続く。
「まぁ、ご自分やご家族や親類縁者が拷問されて殺される覚悟があるのなら、私は何も言いませんけどね」
「……」
「わ、私が死ねばフランスと日本の関係は最悪になるぞ! それでもいいのか!」
「そうなれば、おそらくフランスは地図から消えると思いますが?」
「ち、地図から消えるだと? それは、どういう意味だ!」
「言葉通りの意味です。文字通り、国が世界地図から消えます」
「――じ、冗談だろう? 我がフランスは、人口6775万人だぞ? それだけの人口を――、国を消すとなれば大虐殺と言ってもいいんだぞ! そんな事を、神の力を手に入れたとしても、ただの高校生が! 何の苦労もしたことがない日本人が出来るわけがない! そんなことは、大量虐殺者でも出来るわけ――」
そんなフランス大統領と日本国首相の対話を見ていた中国国家主席は、苦笑いをしながら両国の話を聞いていた。
桂木優斗が中国に手を下した被害は軽く1億人を超える。
それを知っているからこそ、中国国家主席は、一言も話す事は出来ずにいた。
中国としては、EUの一角であるフランスは滅んだ方が良いからであった。
何せ、中国が進めている一体一路の実現にはフランスが邪魔であったから。
「まぁ、信じられないようでしたら桂木優斗に手を出しますか?」
「――やめておこう……」
「では、フランスも桂木優斗には不干渉の立場をとるという事でよろしいでしょうか?」
「ああ……」
さすがのフランス大統領であったとしても自国が滅ぶとなったら引き下がる他ないのであった。
そんなフランスと日本との対話を聞いていた各国代表は溜息を漏らすと共に、中国国家主席も違う意味で落胆をしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます