第577話 国連本部(15)第三者Side

「申し訳ないが、それは叶わないでしょう」


 ロシアとドイツの代表の言葉を否定した日本国首相は、はっきりと集っているG20の代表に伝わるように、静かに告げる。


「どういうことだ! 銃弾を弾くだけでなく山を消し飛ばし、如何なる病も治療できるほどの神の力を持つ化け物を! 日本だけで占有するつもりか!」


 韓国大統領は叫ぶ。

 その言葉に、眉間に皺を寄せた日本国首相である夏目総理は、韓国大統領を睨みつけると――、


「韓国大統領。彼は――、桂木優斗は日本国籍を有する我が日本国の国民だ! それを化け物だと? そのような物言い撤回してもらおうか?」 

「化け物ではないか! 人間の領分を超えた力を有するなぞ化け物以外の何物であるのか! だったら有効活用するのが――ヒッ!」


 途中で韓国大統領が悲鳴を上げる。

 理由は、韓国大統領が話している途中で日本国首相がテーブルを殴りつけたからであった。


「もう一度言う。我が、国民のことを化け物呼ばわりすることは止めてもらおうか? 貴国も自国の国民を他国に化け物呼ばわりされたら良い気はしないだろう?」


 元・自衛隊上がりの夏目一元に睨まれた韓国大統領は殺気交じりの言葉に一瞬で委縮し、腰を抜かすようにして椅子に座る。

 そして夏目の剣幕を見ていたドイツの首相もおとなしく席に腰を下ろした。


「はあー。申し訳ない。自国民を蔑ろにされて少しばかり言葉が粗くなってしまったことは謝罪しよう。だが、彼は――、桂木優斗は何度も日本を救っている」


 そこで、夏目総理は中国国家主席へと視線を向けた。

 中国国家主席は、歯ぎしりをすると――、


「まぁ、ここは桂木優斗君については日本政府に任せるという事でいいのではないのか?」


 すでに中国政府は、桂木優斗が中国軍の海軍9割、空軍5割、陸軍1割を何の感慨もなく敵対しただけで殲滅したという情報を得ていた。

 しかも民間人の死者は判明しているだけでも軽く数百万人に達成しており、重軽傷者、放射能汚染した人間を含めれば1億近い。

 それだけの損害を中国に与えた高校生である桂木優斗。

 まだ若干16歳の彼が何の心の病も発症していないことに対して中国政府は最大限の警戒態勢を取っていた。

 これからも報復をされるのではないのか? と、中国政府は桂木優斗一人を恐れていたのであった。

 だからこそ、日本国と軍事同盟を結ぼうと躍起になっていた。


「そうだな。アメリカ政府としても、神の力というのは触れてはいけない物だと認識している。有効活用できるのならいいが、無理に国連の下で働かせるというのは――」


 中国もアメリアも何かあれば日本国に桂木優斗の矛先が向けばいいと考えた結果、日本国政府に大幅に譲渡をしていたのだ。

 そして、それは――、


「イギリスも、アメリカと中国と同じです。桂木優斗という少年には、不干渉を国連は貫いた方がいいと思います」


 残った常任理事国であるフランスは、拳を握りわななかせたあと――、


「どうかしている! たかが一人の――、たかが高校生一人のために、国連が譲歩するなどありえない!」

「では、エマロエル大統領としては、どうお考えなのですか?」


 アメリカ大統領が、フランス大統領に問いかける。

 するとフランス大統領は、口角を上げると――、


「決まっている! この高校生が神の力を有していて手出しが出来ぬのなら! この高校生の――、桂木優斗という小僧の親類縁者! もしくは恋人や友人を攫って人質にして国連の飼い犬として利用すればいいだけの話だ!」



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