第576話 国連本部(14)第三者Side

「――き、聞いたことがあるぞ!」


 まず声を上げたのはサウジアラビアの国王の代理であった。


「たしか……。どんな病でも怪我で治すことが出来ると……」

「――わ、私も聞いたことがある! たしか外務省筋から話しが上がってきていた。眉唾モノだと思っているが……」


 イタリアの首相が声を上げる。

 続いて、カナダにフランス、トルコやインドにオーストラリアまで声を次々と上げていき――、


「奇跡の病院だと! そんなモノがあるわけが――」

「そうだぞ! そもそも、神の力だと! そんなモノが存在しているわけがない!」


 ロシア代表と韓国代表が日本国首相の言葉を否定するが、次に映し出された映像で、各国代表の動きが氷つく。

 そこには、六波羅命宗の山奥の施設にたった一人で突っ込み戦闘を行っている桂木優斗の映像が映し出されていた。

 

「――じゅ、銃弾を!? ――す、素手で弾いているというのか?」


 無数に飛び交う銃弾。

 その前に立ち、素手で全ての銃弾を弾く映像。

 それが国際会議場で流されていた。


「どうですか? 韓国大統領。これでも彼が、神の力を手に入れていないと思いますか?」


 笑みを浮かべる日本国首相である夏目は、冷ややかな目で韓国大統領を見る。


「――ッ!? ――つ、つまり……」


 韓国大統領は認めたくはなかったのだ。

 圧倒的な兵器を――、神の力を有している人間を日本政府が保有しているという事実を。


「さて――、韓国大統領もご理解頂けたようで満足です」


 静かに自信を持ち各国代表の面持ちを見渡したあと、日本国首相である夏目は、口を開く。


「いま日本には神の力を手に入れた人間が居ます」


 夏目の、その言葉に、誰もが固まったまま動かない。


 ――否。

 事前打ち合わせをしていたアメリカとイギリスだけは、目配せをし合っており次の話を切り出すタイミングを見計らっていた。


「――で、では……何か! 日本は、神という超常的な力を有している高校生を兵器として転用するということか!」


 ロシアの代表チャレンコフスキーは、吐き捨てるように忌々しそうな目で日本国首相を睨みつける。


「別に軍事転用するなど考えていない」

「信じられるか! 日本は第二次世界大戦を引き起こしたんだ! あれだけの事件を! 大虐殺を引き起こしたんだ! 許されるわけがないことをしておいて、軍事転用しないなどの戯言は信じられない! 神の力を有している高校生を軍事に利用しないという証拠はどこにもない! ここは我が大韓民国! ――いや! 国連が神の力を有している高校生――、桂木優斗を世界の為に管理する方がいい!」

「そうね。ドイツとしても、反物質を生成できる人間は、国連で管理した方がいいと思うわ」


 ドイツの大統領が口を出してくる。



 

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