第575話 国連本部(13)第三者Side
中国国家主席の何度目かの言葉に、日本国首相である夏目は口を開く。
「日本国は、中国との軍事同盟については考えてはいない」
落ち着いた声で静かに語った日本国首相の言葉に中国国家主席は、日本国首相を一瞬睨みつけるような表情をしたあと、満面の笑みを浮かべる。
「中国は、尖閣諸島については一切! 手を出さないことを確約しよう」
「尖閣諸島は、そもそも日本国固有の領土である。中国政府が、口出しをして良いものではない。要件が済んだのなら、先ほどの映像についての説明に戻りたいと思うが?」
「くっ――」
取り付く島もない夏目の言葉に、歯ぎしりをする中国共産党国家主席。
そんな二国の様子――、その雰囲気から、今まで日本政府が中国側に配慮して何も言えずにいたことが日常的だった事と真逆な事に各国の代表はざわつく。
「ジョージ大統領」
「そうだな。――では、日本国とアメリカ合衆国の研究チームが先ほど発表した反物質に関してだが、反物質を生成したのは一人の高校生だと言う事が判明した」
――ざわざわ。
――荒唐無稽。
アメリカ大統領の一言――、高校生が反物質を作り出したという言葉は、一瞬誰もが理解できずにいた。
だからこそ、国連会議場はざわついた。
「どういうことかな?」
フランスの大統領エマロエルが口を開く。
「一人の人間が――、しかも高校生が反物質を作ったと聞こえたが?」
「そうだ! 反物質を作るためには、巨大な施設と設備が必要とされている! そんな代物を高校生が作れるわけがない! 日本政府もアメリカ合衆国も、この場をどこか理解しているのか! 世迷言を語られても困る! アメリカ合衆国大統領! あなたは世界が滅びると言った! なのに、このようなありえない戯言を言われても――」
カナダの大統領が呆れた口調で話すが――、
「本当のことです。――では、次の動画を見て頂きましょうか」
表示されたのは阿倍珠江と、桂木優斗が海上で戦っていた映像であった。
海の上――、何の足場もない場所で水の上で戦っている様子が、軍事衛星が映像として残していたモノが、各国代表のテーブル上に置かれているモニターに映し出されていた。
そして、桂木優斗が手に爆雷光を作りだし、阿倍珠江を粉々に粉砕した模様も。
「アメリカの軍事衛星が捉えた映像になる」
「――こ、これは特撮ではないのか?」
フランスの大統領が信じられないと言った様子で口にする。
「いえ。これは現実です。彼は――、桂木優斗と言います。年齢は16歳。神の力を手に入れた唯一の人間であることが日本国が有する神社庁から報告が上がってきています」
「――か、神の力だと!? そんなバカなことが! 科学全般の、現代社会で!」
最近は、発展が目覚ましいインドの代表が口を挟んでくるが――、
「事実です。そうでなければ、反物質を生成する力や、空を飛翔する力、さらには肉体再生能力など説明がつきません」
アメリカ合衆国大統領は、日本国から提供されている情報を精査しながら話す。
そこで日本国首相も口を開く。
「皆さんは、奇跡の病院というのをご存じありませんか?」
その言葉に、各国の代表は驚き顔を見合わせた。
誰もがその言葉を聞いたことがあったからであった。
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