第574話 国連本部(12)第三者Side

 韓国大統領の言葉に全員が噴出しそうになるのを堪える。

 今までの会話の流れからして、どこからどう見たら日本が反物質の生成の実験をしていたという結論になるのかと言う事に。

 それは日本国の首相である夏目も同じ考えであった。

 むしろ日本人としては、いつもの韓国という感じでもあった。


「ユン大統領」


 落ち着いた声で、日本国首相である夏目は、韓国の大統領に向けて話しかける。


「言い訳は聞かないぞ! 反物質の生成なんて! 実験なんて! 国際ルールを無視している! もし認めてほしいなら技術のノウハウを公開するべきだ!」


 まったく話を聞かず韓国の大統領は口早に自己主張するが――、そんな日本国首相と韓国大統領との会話を聞いていたロシア代表も、


「日本は非核三原則があるというのに! 反物質の生成の実験をしていたという訳か! それは国際ルールとして間違っている! そんな国が常任理事国などあってはならない!」


 あくまでも非核三原則は、日本が守っているだけのモノであり国際ルールでも何でもない。

 それなのに、趣旨を拡大して大声で怒鳴る様はいつもの韓国とロシアそのものであった。


「ロシアも韓国も落ち着いてほしい」


 仲裁するかのように、アメリカ大統領が口を開く。


「両国とも、日本が反物質生成実験をしていることを前提に話をしているが、そもそもな話、自国内で反物質を爆発させて実験するような愚かな国は北朝鮮くらいなモノだ。地下実験場であったとしても、そんなことをすればマスコミに無い事無い事叩かれて夏目首相が、首相の座を追われる可能性は非常に高い。そのようなことを、本当にするとお思いか?」


 アメリカ大統領の言葉に、ロシアの代表は沈黙するが――、


「日本人は狡猾だ! どうせ! ロビー活動でもしてジョージ大統領の共和党に金でもバラまいたんだろ! これだから日本人は信用できない! 息を吐くように嘘をつく!」


 まったく人の話を聞いていない人間――、韓国の大統領が叫ぶ。

 

「――はぁ……。どうして、こんな国が同盟国なのか……」


 ジョージ大統領の呟きは小さかったが、音声自体は、レコーダーが拾ってはいたが興奮して血管が浮き出て火病を起こしていた韓国の大統領の耳に入ることは無かった。


「中国共産党の党代表としても、日本国が反物質の生成実験はしていないことは信じているし、これから軍事同盟を締結したいとも思っているからこそ、日本は清廉潔白だと、中国は理解をしている」


 その日本上げの中国の国家主席の言葉に、参加していた国々の代表は驚愕の表情を浮かべた。

 いままで尖閣諸島や台湾付近で軍事演習を行ってきた国の態度とは、まるで真逆であったからだ。

 

「――ち、中国国家主席は、日本とそこまで……」


 インドネシアの代表は、今まで中国共産党と蜜月だっただけに、何の情報も降りて来なかった事に不信に思いながらも中国に問いただす事にしたのであった。

 そしてインドネシアに話しかけられた中国国家主席は、インドネシア代表の方を一瞥することもなく、


「中華人民共和国は、日本との軍事同盟の締結を望んでいる」


 インドネシア代表の言葉に一切! 答えることなく、それだけを中国国家主席は言葉を口にした。

 日本を擁護するアメリカと、日本と軍事締結を望む中国。

 それは、今まで日本を間に挟んでアメリカと中国が睨み合っていたのが、まるで嘘のようであった。

 そして、そんな場面を見せられた各国の――、G20の国々の代表は、事の成り行きを固唾をのんで見守る事しか出来ずにいた。





  

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