第573話 国連本部(11)第三者Side
「あれとは……?」
「ふんっ。すでにロシアもアレの情報は得ているのだろう?」
中国の国家主席は、そう毒づく。
「だから、何だと言うのだ!」
ロシアの代表であるチャレンコフスキーは、中国の国家主席が何を言っているのか本当に理解できないのであった。
彼は、周りを見渡すが、中国の国家主席が語った内容を理解できたのはEUやアメリカなどの先進国のみで、それ以外の国々の代表は顔を見合わせていた。
そんな様子を見て中国の国家主席は、アメリカ大統領へ視線を向けた。
その中国の国家主席の表情は、呆れた表情であった。
「まったく、日本のことを脅威だと思っているのならアレを知らなければ不味いと言う事くらいは理解しておかなければいけないというのに……」
「だから何を言っているのだ!」
中国に裏切られたたと感じていたロシアの代表は声を荒げる。
「ジョージ大統領。世界が破滅するということを、今回、議題に上げたという事は、アレを、この場で報告するのだろう?」
中国国家主席は、アメリカ大統領に問いただす。
「さすがは、中国だな?」
中国国家主席の言葉に、頷くアメリカ大統領は、自身の手元のスイッチを押す。
すると、各国の代表が座っているテーブルに置かれているモニターに、一つの映像が映し出される。
それは、日本の福島で桂木優斗がディアモルドと戦った場所の映像であった。
ただし、それは映像不明瞭であった。
「――な、なんだ? これは!」
映像には、桂木優斗により福島県喜多方市の北部の山が一つ消し飛んだあとの光景が映し出されていた。
それと共に、いくつものグラフが表記された。
「各国の代表に、この映像を説明します」
そう切り出したのは日本国の夏目総理であった。
彼は、続けて――、
「今回、我が国で福島県喜多方市から北上した山中にて山が消えました。アメリカ国防総省の資料を見て頂くと分かりますが、山が消えた原因は反物質が使われたとのことです」
その日本国首相の言葉、そしてアメリカ国防総省が関わっているという事に国連会議場に集まっていた各国の代表の中からざわつく声が上がる。
その大半が、「何を馬鹿なことを――」と、言う内容が大半であった。
「使われた反物質の量は、合計で1グラム。都市を一つ消し飛ばすほどの威力と推測された」
日本国首相である夏目だけではなく、続けて言い放ったアメリカ大統領の言葉。
それを聞いていたインドネシアの代表が手を上げる。
「反物質というのは机上の空論だったはずでは?」
そうインドネシアの代表が口にするが――、
「米国と日本の研究チームが、衛星写真から得た情報を解析した結果、反物質だと断定したわけです」
アメリカ大統領ジョージは、冷静に言葉を返す。
「――で、では! 日本は! 反物質の生成の実験をしていたということか!」
そこで、またしても韓国の大統領が声を上げた。
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