第572話 国連本部(10)第三者Side

「き――、貴様ら!」


 苛立ちを隠そうともせずに、再度、テーブルを叩くロシアの代表。

 そのあまりの剣幕に回りの出席してはいたが、事情を知らない国々の代表の面々のそれぞれ複雑な表情を見せる。

 中には、日本の常任理事国入りは、すでに決まっているという事に気が付く代表もいた。


「――では、決議をとるとしようか」


 アメリカ大統領は、ロシアの言葉を一切無視して残りのG20の国々を見渡すと――、


「国連常任理事国から、ロシア連邦を外すことについて異論のある国は手を上げるように。もちろんロシアには、決議に関して異論を挟む資格はない。ウクライナに宣戦布告もせずに侵略戦争を引き起こし、民間人を拷問し大量に虐殺した国に国連に入る資格すらないからな」

「――なっ!」


 あまりと言えば、あまりのいい様にロシアの代表チャレンコフスキーは額に血管を浮かべるが――、


「では、反対するのは、南アフリカ、メキシコ、インドネシア、韓国の4か国という事だな?」


 ロシア連邦を、国連常任理事国から排除するためにという決議に反対したのは4か国のみ。

 残りの国は、国際状況を鑑みてロシアの国連常任理事国からの除名については、何も言えずにいた。

 侵略戦争を行い世界中の景気低迷や、エネルギー不足に食料危機を引き起こしたロシア連邦を何処の国も問題だと思っていたからであった。

 その様子に、満足そうに頷くアメリカ合衆国大統領は頷くと笑顔を見せたあと、


「――それでは、ロシア連邦を常任理事国から外すことする。代わりに日本国を常任理事国に入れるとする」


 アメリカ大統領の宣言にイギリス、アメリカ、中国が拍手する。

 そのあとに続くように、他の国々も拍手していくが――、


「なぜだ!」


 ダンッ! と、一際、大きな音を立てて叫んだ国があった。

 それは大韓民国の大統領であった。


「日本を常任理事国に推薦するアメリカ! あんたはおかしい!」


 顔を真っ赤にして韓国の大統領は叫ぶ。


「日本は戦犯国! 日本を常任理事国にするなんておかしい! 我が大韓民国を常任理事国にするのなら理解はできる! だが! 日本が常任理事国入りするなんてありえない!」

「――そ、そうだ! 韓国の言う通りだ! 第一、ロシアが常任理事国から外されることなどあってはならない! アメリカは世界の秩序を破壊しようとしているのか! そして! それに追従する国々は核ミサイルを撃たれる覚悟があるのか! 世界大戦を引き起こす覚悟がアメリカにあるのか!」


 韓国の大統領の発言を受けて、ここぞとばかりにロシアの代表が各国に脅しとも捉えられる言葉を口にしたが――、


「ロシアさん」


 中国の国家主席が溜息交じりにロシアの代表へと視線を向けると重々しく口を開いた。


「あんた、アレと敵対する気概はあるのか?」


 そう一言、中国の国家主席は言葉を呟いた。



 

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