第569話 国連本部(7)第三者Side
「各国の代表には見てもらいたい。これはボストーク基地が健在で会った時の映像だ」
そうアメリカの大統領が口にしたところで、
「信じられない! ロシアの基地を! 無断で! アメリカは衛星写真を撮っていたというのか! これは国際問題だぞ!」
「文句はあとで聞こうか?」
顔を真っ赤にしたロシアの代表がテーブルを叩きながら抗議した言葉を一刀両断したジョージ大統領は、
「まず次に映る映像を各国の代表に見てもらいたい」
アメリカ大統領が、そう口にした瞬間、人工衛星が映し出しているボストーク基地のすぐ真横の棚氷が突然崩れ落ちていく。
そして、わずかな時間で巨大な穴が形成される。
「これは?」
インドネシア大統領が口にする。
「ふん、ポリニヤではないか」
ロシアの代表が口にするが、多くの国の代表が、その言葉を聞いたことがないらしく困惑の表情を浮かべる。
「ポリニヤとはなんだ?」
それは中国の国家主席も同じであった。
「定期的に、このような穴が南極大陸では作られる。理由は不明だが、そういう穴をポリニヤと呼んでいる」
ロシア代表は憎々しい表情をしながら吐き捨てるように言葉を口にするが、次の瞬間! 直径200メートルまで拡大した穴から巨大なタコのような触手が次々と姿を現した。
「――な、なんだ!? こ、これは……」
オーストラリアの大統領が口火を切ると、次々と事情を知らされていない国々の代表から映し出された映像について困惑した声が次々と上がっていく。
「アメリカ大統領! これは、いったい!」
フランスの大統領が事実を確認するようにアメリカ大統領に詰め寄る。
そんなフランスの大統領からの言葉に、アメリカ合衆国大統領ジョージは頭を左右にふる。
「私にも分かっていませんが!」
ジョージ大統領の視線がロシア代表へと向けられた。
自然とロシア以外の全ての代表の視線はロシアから派遣されてきていた外交官であり代表へと向けられた。
その表情は、白を通り越し青くなっていた。
「そろそろ本当の話を聞かせてもらってもいいですかな? ロシアさん」
「――くっ!? ……わ、私は……、私は何も知らない……」
苦虫を噛み潰すような表情をしたまま、ロシアの代表は、それだけを口にして顔を伏せてしまう。
「知らないは話は通らない! きちんと説明する義務はあるはずだ!」
そうサウジアラビアの代表が叫ぶ。
「そうだ! 説明責任を果たせ!」
「そうだそうだ!」
インド、インドネシア、メキシコ、サウジアラビア、トルコ、韓国など次々とロシアの態度に不平不満を述べていく。
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