第568話 国連本部(6)第三者Side
「――な、何故! こちらを見る!?」
「それは貴国が一番よく知っていることだと思うが?」
「――ッ!?」
ロシア代表の表情が変わる。
「言いがかりは! よしてもらおうか!」
ロシアの代表が顔を真っ赤に染めてテーブルを叩きつけるとアメリカ大統領に向けて叫ぶが――、
「KGBが何をしていたのかは、すでにCBIでは調べがついている」
そうアメリカの大統領が言葉を口にしたところで、各国代表が座っている机に置かれている画面上に無数の触手を持つ化け物が入ったホルマリン漬けの映像が映りこむ。
その映像が映った瞬間、ロシア代表の表情が赤から青へと一変する。
だが、多くの各国代表は戸惑った表情をしたまま。
「何を言っているのか理解に苦しむな! アメリカも、このような合成写真を使ってまで我が祖国たるロシアを愚弄するなど愚かにもほどがある! そう思うであろう? 中国も!」
「……」
ロシア代表の言葉に中国国家主席は無言のまま日本の方を見る。
そんな中国の視線に日本政府首相である夏目は視線を逸らす。
「――チッ!(まったく、中国は何を考えている? 中国にとっても我が祖国に加担した方が得るものが大きいと言うものを……)」
「ロシアの代表。逆にこちらから聞こうか?」
考え込むために沈黙したロシアの代表を見てアメリカ合衆国大統領ジョージは問いかける。
「何だ?」
横柄に応じるロシアの代表。
「まず、どうしてロシアの大統領が、この場に来ない?」
「それは……。閣下は、いま手が離せないのだ!」
「ウクライナへ一方的な侵略戦争を仕掛けた結果、ロシア国内の政情が不安定だから身動きが取れないのが間違いではないのか?」
そのアメリカ大統領の言葉に、ロシア代表が歯ぎしりをする。
実際のところは、ロシア国内からアメリカに向かう際に暗殺も考慮に入れた結果、ロシア大統領ブーサンは、身動きが取れなかったのが本当のところであったが。
それを実際のところ知っていたのはアメリカ大統領と日本国政府の首相のみであった。
「――き、貴国は! 偉大なるロシアを冒涜するつりなのか!」
「先に我が祖国アメリカを冒涜してきたのは、貴殿からであったが、私の聞き間違いだったかな?」
ロシア代表の言葉に、上から被せるように早口で捲し立てるアメリカ大統領。
「それと、余計な弁論に時間を費やすつもりはない」
アメリカ大統領が続けて語った言葉と同じくして、国連会議場のスクリーンが点灯すると、スクリーン上に南極大陸のボストーク基地の映像が映った。
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