第567話 国連本部(5)第三者Side
「まず、南極大陸の半年前の映像を見てもらおうか?」
そうアメリカ合衆国ジョージ大統領が口にする。
各国の大統領は、画面に映し出された南極大陸の衛星写真を見る。
その表情は千差万別であり――、まったく表情を変えない国の代表。
そして、首を傾げる国の代表と反応は分かれた。
「そして、次に映し出される南極大陸の映像をみてもらいたい」
アメリカ合衆国大統領の発言と共に、もう一枚の南極大陸を遥か上空の衛星が映し出した映像が各国の首脳の前に置かれているモニターに表示された。
そこには、南極大陸の20%が消失している映像が公開されていた。
それと同時に、国連会議場では、どよめきが広がっていく。
「アメリカ大統領」
「何でしょうか?」
サウジアラビアの代表が手を上げる。
「この映像は本当のことなのですか?」
「本当のことです。現在、南極大陸を覆っていた雪の20%が、この一カ月の間で焼失し海へと溶け出しています。すでに東京都23区の10個分とも言える氷が融解している状況であり、その影響で各国は異常気象に見舞われていると思われますが?」
アメリカ大統領の言葉に、その場に居合わせたアルゼンチン、ブラジル、インドネシア、韓国、メキシコ。サウジアラビア。南アフリカの首脳陣が顔を見合わせた。
そして――、
「それでは我がメキシコやインドネシア、EUや南アフリカ、南アメリカで起きている異常気象は――」
そうメキシコの代表が口にする。
ただ、最後まで言葉を口にすることは出来なかった。
今、アメリカ大統領が口にしたことが本当であるのなら、もはや一国の問題ではなく世界規模の問題であったからだ。
軽々しく口にする事が出来る国が、どれだけ存在しているのか。
「もちろんです。我が祖国アメリカでも発生している大寒波、そしてヨーロッパ全域で発生している異常気象、中東地域での大洪水など、全てが関連していると言って差し支えない」
そのアメリカ大統領の言葉に誰しもが言葉を失う。
「それで、このような場で先進国G20を集めた上で、世界的な気象異常を伝えた上で世界は滅亡すると、先ほどアメリカは言いましたが、世界破滅だけを通達するためだけに、この場を設けたわけではありませんよね?」
そう口にしたのはイギリスの女性首相であった。
彼女は、手を組んだままジッと、真っ直ぐに青い瞳をアメリカ大統領に向けたまま言葉を口にした。
「もちろんです」
「――では、何か手立てがあると? このような状況に陥った原因に心あたりがあると?」
イギリス首相の問いかけに、アメリカ大統領の視線はロシアの代表へと向けられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます