第563話 国連本部(1)第三者Side
――ロシア艦隊が、南極大陸のオーストラリアが擁する南極研究基地ケイシー・ステーションから沖合100キロで壊滅し3日が経過し――。
現在、世界各国のトップがアメリカ合衆国――、ニューヨーク市マンハッタン東部に位置する国連本部へと集まっていた。
そんな国連本部に、一台の黒塗りの防弾仕様のリムジンが停まる。
車から降りてきたのは、日本国の第99代総理大臣日本国総理大臣である『夏目一元』であった。
元、自衛官であった彼は40を過ぎていたが鍛え抜かれた肉体をしており、それは背広を着ていても一目で分かるほどであった。
「おお、夏目総理」
「これは、アメリカ合衆国の大統領ではありませんか」
フランクに夏目総理に話しかけたアメリカ合衆国ジョージ大統領とは対称的に、夏目総理の反応は冷ややかなモノであった。
「随分と、今日は機嫌が悪いようだな? 夏目」
「当たり前だ。今、日本がどういう状況に置かれているのか、同盟国のアメリカも理解しているはずだが?」
「分かっているとも。だからこそ、各国のトップが国連本部に集まっているんだろう?」
「――うちとしては、今は日本国内で起きている問題の対処で手一杯なんだが?」
「分かっているさ。だから、米軍が日本国内で起きている事に関して手を貸そうと言っただろう?」
そのアメリカ大統領の提案に、日本国総理大臣である夏目は、心の中で「よく言う」と、ツッコミを入れていた。
アメリカが手を貸したいのは、バチカンが手に入れようとしていたパンドラの箱の影響で、死者や妖怪が蘇った場所のデーターを手に入れたいから。
それを既に把握していた日本国は、同盟国アメリカの米海軍の岩手県や福島県、日本海側の件には触れさせないようにしていた。
「国内の問題は、自国で対応しているから気にしなくていい」
「また、つれないことを――」
ヘラヘラとした態度で夏目に言い寄ってくるアメリカの大統領に嫌気が差しながらも夏目一元は口を開く。
「こんなところで時間を費やしている場合ではないのではないのか? 今回は、それが目的じゃないだろう?」
「ああ。そうだったな」
「他の国も来ている。世界の警察のアメリカ合衆国が国連の場に遅刻するのは良くないと思うが?」
「まぁ、そうだな」
渋々と言った様子で、アメリカ合衆国大統領は、笑みを浮かべると国連本部の建物の中へと入っていく。
そんなジョージ大統領の後ろ姿を見ながら夏目一元も、日本国総理大臣として国連本郡が置かれている建物の中へと足を踏み入れた。
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