第562話 ロシア艦隊(3) 第三者Side
「巡洋艦ビョートル・ヴェリキー轟沈! ミサイル駆逐艦セヴェロモルスク連絡が取れません!」
次々と旗艦の艦橋に立っていた将軍アドバドフの元へと戦況が報告されていく。
「――な、何が……起きている?」
あまりにも常軌を逸した現代の戦争とは掛け離れた一方的な戦いとも呼べない殺戮と言ってもいい状況に、アドバドフは現状を理解する事も出来ずに呆然としていた。
その間にも戦況は悪化の一途を辿る。
「ミサイル駆逐艦マーシャル・シャボシニコフ爆散!」
その最悪とも言っていい報告にハッ! としたロシア海軍の将軍アドバドフは、艦橋で戦況の報告をしていた技術士官に詰め寄ると――、
「今までの戦況報告は本当なのか?」
――と、詰め寄るが!
「嘘を報告してどうなるというのですか!」
情報担当官も混乱をしているのか将軍であるアドバドフに叫ぶようにして答える。
その様子に、アドバドフは唇を噛みしめる。
「――い、いま……。いま! 残存している艦艇は、どの程度あるのだ?」
「残り3割を切っています!」
「すぐ撤退だ! 撤退を――」
撤退の命令を下そうとアドバドフが声を上げた瞬間、旗艦でもあり航空母艦でもあるアドミラル・クズネツォフの艦橋は太陽光線を収束させた焦点温度1万度を超える巨大なレーザーにより消し飛ぶ。
さらに巨大なレーザーは、全長305メートルを誇る航空母艦を中央部分から焼き切り、その船体はくの字に折れ爆発炎上し南極海へと沈んでいく。
その光景を上空から見ていた白髪の男は、
「他愛もない。所詮は人間の作りし兵器と言ったところか」
無表情に無感動に沈んでいくロシア艦隊を見下ろしながら白髪の男は呟く。
「それにしても――、アザトース様は何を警戒しているのか……。異世界からの訪問者である、あの不死者のことか? それとも……。十二至精霊のことか?」
そこまで呟いたところで、男は眼差しを南極海に沈んでいく戦艦や航空母艦や潜水艦ではなく上空へと向けた。
「ボルカネル。何か、問題でも起きたのか?」
「星の守護者が、こちらに向かってきている」
「ほう……。星の守護者か。我々が寄生虫を始末してやろうとしているのに邪魔しにくるとは……」
「ニャフルガ。余計なこといい。アザトース様は、時間を稼げと言っている。時間を稼ぐためなら――」
「殺してもいいということか?」
「それは駄目。異世界から来たアイツらを始末させる為に使う事が得策。今はことを構える時じゃない」
「――ちっ。まあいい。
上手くあしらっておくとしよう。
ボルカネルと言われた男は溜息をつくと、自身を迎えにきた赤髪の女と共に、ボストーク基地へと向かって撤退した。
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