第552話

 恐怖と絶望から俺から逃れようと――、離れようと、辻本守は、必死に移動しようとする。

 両腕を取調室の机に叩きつけて、その反動から後ろに仰け反ろうとしたが、俺は辻本守の片腕を掴み仰け反って離れようとするの阻止する。


「――さて、それじゃ取り調べを始めるとするか」


 俺は調書を取るための、ブックカバーを開く。

 そして、辻本守の経歴へと目を通す。


「えー。名前は辻本守で合っているな?」


 確認の為に俺は辻本に名前が正しいのかを確認するが、男は歯をガタガタ動かすだけで超えを出さない。


「まったく――」

「ぎひいぃいいいい」


 男の体中から煙が上がる。

 とりあえず300万ボルトほど、掴んでいた腕から電流を流しこんで、一度殺す。

 そして、掴んでいた腕を機転として肉体を蘇生。


「うああああああああああああああっ」

「よし。正常になったな。――で、話を聞きたいが、名前は辻本守で合っているな? 別に、答えなくもいいが何度でも殺して生き返らせるから、素直に答えるか何度も死に戻りするか自分で選べ」

「…………」


 無言のまま何度も首肯する辻本。

 

「そうか」


 人間、素直が一番だよな。


「さて――、次は年齢と出身地だが――」


 俺は、辻本守の経歴を確認していく。

 辻本は、壊れた玩具のように素直に頷く。


「よし。では、お前が本人だと分かったところで――、次にお前が犯した事件の調書を取りたいと思う」

「……」

「お前、子供を生贄にして生きながら大蛇に喰わせたことがあるよな?」


 俺は、六波羅命宗地下施設内で生き返らせた人間達の記憶を処理した時に見た光景を思い出しながら語り掛ける。


「しかも年端も行かない女の子を喰わせたよな? それどころか、お前は、その現場を見ていたよな?」

「――し、しらな――ひぎいいいいいいいいいい」


 掴んでいた左腕とは反対側――、右腕を指弾で吹き飛ばす。

 周囲に撒き散らされる肉片と鮮血。

 感度3000倍中という事もあり、辻本は一瞬で痛みのキャパオーバーを超えてショック死するが――、


「な、なんで……なんで……、俺は、生きて……!? 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い」


 感度3000倍の中、腕を吹き飛ばしたまま、俺は放置している。

 おかげで、辻本は何度もショック死と生き返りを繰り返している。

 最終的には、「痛い、痛い」と、しか、言わなくなった。


「――さて、聞きたいことがある。お前、子供を生贄に――、生きながら大蛇に喰わせたことがあるよな?」


 何度も生死を境を繰り返している男に、俺は笑みを浮かべて語り掛けた。




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