第540話
「そうか」
それだけ、俺は純也に言葉を返す。
その後は、車内は沈黙に包まれた。
お互いに、何の会話もないまま、千葉県警察本部へと到着したあと、俺と純也は車から降りて建物の中へと入る。
すると、行きかう警察官や関係者が俺達に視線を向けてくるが、俺は何時ものことなので無視して、警察本部の中を歩く。
「桂木警視監、待っていたよ!」
唐突に声をかけられる。
視線を向ければ、そこには長野県警本部長の本山 樹が居た。
「本山本部長? どうしてこんな所に?」
「――私が、ここに居る事が、そんなに疑問かね?」
「疑問というか、諏訪市の件は? まだニュースになっていないようだが?」
諏訪市で起きた事件は、長野県警が総力を挙げても現場検証を含めて、かなりの時間が掛かると神谷に聞いていただけにトップに近い男が、この場に居る事に、俺は少し違和感を覚えていた。
「実は、そのことで直接、君に、お礼を言いたくてね」
「お礼?」
「ああ。六波羅命宗の件だ」
「なるほど。そのことか」
「そうなる。調書を取るのに手伝ってくれることに了承してくれたと聞いてね。ちなみに諏訪の方の教団本部の後始末については、都築さんが頑張ってくれている」
「それは諏訪警察署に丸投げしたと言う事では?」
「そうともいうね。それよりも――」
会話をしている間にも抜け目なく俺の後ろに立っていた純也へと視線を向けていた本山は、
「彼は? 君の助手という感じではないよな?」
「友人です」
「友人ね……。どう見ても一般人って感じには見えないな」
「それは気のせいだ」
流石は長野県警の上の人間。
人を見る目はあると言う事だろう。
「とりあえず容疑者二人については地下の留置所で入れてある。そこまで来てくれ」
「分かった。とりあえず神谷に会ってくるから」
「ああ。十分だ。待っているよ」
ホールで分かれたあと、純也を連れて内閣府直轄特殊遊撃隊として用意されている部屋へと入る。
「桂木警視監、お待ちしていました。それと峯山純也さんも、体には異常はありませんか?」
そう話しかけてきた神谷の表情をジッと見たあと、ハッ! と、した表情をした純也が、
「あ、あの……、貴女は、たしか神谷さんでは?」
「覚えていらっしゃいましたか」
「岩手の時はどうも――」
「いえいえ。それよりも桂木警視監、本当に彼を同行するおつもりですか?」
確認するかのように、神谷が俺に話しかけてくる。
俺はその言葉に頷いた。
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