第541話
「そうですか……。本当は、民間人を同行させることは避けたいところなのですが――」
俺が頷いた事に対して、ジッと俺を見て真意を伺うような表情をしていた神谷は溜息をつき降参とばかりに、バッジをデスクの上に置く。
「陰陽庁のバッチか」
村瀬が上着に付けていたのを見た事がある。
黒い円形のバッチ。
そのバッチの中心部には五芒星のマークが、刻まれているが……、その文字の部分が白い色合いに変色していた。
たしか村瀬が付けていた時は文字の部分が金色に輝いていたはずだが……。
「陰陽庁の関係者という事で同行させてください。幸い、安倍晴明の式神を有しているのですから、問題はないと思います」
「そうだな。純也」
「何だよ……」
「コレを上着に見える位置で、付けておけ」
「付けておけって……、何をさせるつもりなんだ?」
「別に何もさせるつもりはない」
「峯山君」
病院に見舞いに行ってから険悪だった俺と純也は表層的な会話しか出来ていない。
そんな俺達の様子に気が付いた神谷が純也の名前を呼んだ。
「何ですか?」
棘のある物言いだが、俺と話すよりかはマシだろう。
「それは陰陽庁関係者が付けるバッチになります。それを付けておけば、陰陽庁が身分を保証する形となっています」
「こんなものが?」
「はい。まずは付けてみてください」
ここまで付いてきたこと。
それと半分強制している事に純也は反発感を持っていたかも知れないが、第三者であり岩手県で起きた事件で親身に対応した神谷からの提案という事もあり、仕方なく頷くとバッチを自身のTシャツの胸元に付ける。
すると五芒星を形成していたバッチの白い文字の部分が金色に輝く。
「――い、色が変色したぞ?」
「その色は、ある程度の霊力に反応して色合いが変化します。金色に輝くと言う事は、特A級クラスの霊力を有している証です。ちなみに――」
神谷が、もう一つバッチを取り出し、自身のスーツの胸元に付けるが、バッチに刻まれ
ている五芒星の色合いが変化することはない。
「私が身につけても色合いが変化することはありません。これで、峯山君が、陰陽庁に所属する人間だと警察官は理解してくれます」
「理解? 警察が?」
「はい。陰陽庁と神社庁は、警察と繋がりがありますから。だからこそ、千葉県警本部の中に、陰陽庁があるわけです」
「なるほど……」
得心言った感じで頷く純也。
「――では、桂木警視監。長野県警本部長が地下の留置所でお待ちです」
「分かっている」
「ちょっと待ってくれよ!」
「どうした?」
部屋から出ようとしたところで純也が声を荒げる。
「ここまで付いてきておいてアレだけどさ……、身分が必要とか! 一般人だと無理だとか! 一体全体、俺をどうしたいんだ?」
「だから、言っただろう? 長野県警の取り調べを手伝うって」
「そうじゃない!」
「俺から見ても分かる! 優斗の力は、俺よりも強い」
「そこは理解できているのか……」
「そんな優斗が、取り調べを手伝うほどの事件があったのか? 長野で――! そんで、どうして、俺が、その取り調べに立ち会わないといけないんだ? 意味がわかんねーよ!」
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