第534話
「どうしたいって――、そんなのは――」
純也が、四肢に力を入れて拳を握る。
「決まっているだろ! 皆を守るんだ! そのための力だ!」
「皆か……」
「ああっ! そのために、俺は契約をした!」
「なら、今度は、自分の言葉でお袋さんに事情と説明をするんだな。自分は、超常現象の力を手に入れたから、皆を守るために力をつけているってな……」
「なっ!」
驚く純也を尻目に、
「それにしても、よく神社庁で、修行を受けていた間、両親に不審に思われなかったよな……」
「それは……」
俺の独り言とも呼べる呟きに純也は、先ほどまでの威勢はどこに行ったのかと思うほど、テンションが下がるが、俺は気にしない。
だが、一つ気になることがあった。
神社庁からは、純也の修行は、学校が終わってからが主だと報告が来ていた。
そして夜遅くまで修行を行っているとも。
だが、どうやら、純也の様子からして、きちんと両親には話してはいないようだ。
そうなると、どうやって深夜遅くまで外出していたのか気になるところだ。
「あ。純也! もしかして!」
俺が考えていたところで、都がハッ! と、した表情をすると、
「帰宅が遅くなった言い訳に私達を使っているわね!」
「そ、それは……、あれだよ! テスト勉強とか!」
「それも、私達と一緒に勉強しているって言っているのよね? 佳苗さん、門限時間に厳しいものね」
「……うっ」
つまり、すでに俺達は純也の嘘に巻き込まれていたって事か……、まったく。
「そ、それよりも! 母さんの記憶を本人の了承も得ずに削除するなんて、そんな非人道的な行為は、俺は許せない!」
「話をぶりかえすな。そもそも、親に事情説明していなかった純也が悪いんだからな」
「――ッ」
「とりあえず、今後のことを考えて親には事情説明くらいはしておけよ? 神社庁で働いているって説明で理解されないようなら、手を回して身分証くらいは作ってやるから」
「身分証?」
「ああ。一応、公的機関の身分証があれば親も納得するだろ? 俺も、そうだが、純也にも警察機関での身分証を発行してもらえるように頼むから」
「そ、そんなに簡単に頼めるものなのか?」
半信半疑な様子の純也に、俺は頷く。
「そもそも、俺ですら警視監の身分を持っているからな。なら、警察組織に属するのなら、それなりの身分を用意してくれるだろ」
「それは……、そうだな……」
「なら、あとで神谷に連絡しておく。それと、純也」
「なんだよ……」
「お前、本当に戦う理由が、『皆を守る』ためでいいのか?」
「はあ? 何を言っているんだ? 力があるのなら、弱者を――! 困っている人を全て助けるのが力ある人間の使命みたいなものだろ!」
その言葉に、俺は思わず溜息が出る。
「俺は、正義のために、式神と契約したし、その為なら、どんな修行にも耐えて見せる! だから……、もう二度と悪に屈するような真似は……、あんなことだけは、目の前で誰かを守れなかったような事は、もう絶対に起きさせない!」
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