第528話

「えっと……、つまり優斗の仲間には人間は居なかったの?」


 そこで、ようやく話が元に戻る。

 それに対して俺は頷く。


「まあ、人間ってのは色々と爵位とか勢力とかに分かれるし、金でコロッと動くからな。魔王討伐の旅をしていた俺にとって、そういう勢力と関わりになるってのは、個人情報を握られているようなモノだから、仲間としてつるむことはなかったな。冒険者ギルドには、登録はしていたが、特技やスキルなどは冒険者の命綱になるから聞いてくるような事はなかったし……」


 まぁ、俺にはスキルも魔法の恩恵も一切なかったから、聞かれても特に何か問題でもあるのか? と、聞かれれば、何の問題もないと言えるが。


「でも、言われても見れば人間に召喚されて魔王と戦えって言われたら、普通は断るよね……」


 俺の説明に得心が言ったのか都が呟く。


「うん。胡桃も、そんな身勝手な人達の為に働くのは嫌なの」

「妾だったら国を滅ぼしておるな」

「私も……」


 胡桃に続いて、白亜もアディールも身勝手な人間の味方はしないようだ。

 だが、そう考えると……、都を死なせた原因を作ったのは俺と言う事になる。

 俺が、馬鹿な選択をしたせいで……。


「――でも、人を助ける気はないのに、どうして優斗は魔王軍と戦ったの?」

「……まぁ、色々とあってな」

「そうなのね」


 俺が言い渋っていることに気が付いたのか、視線を逸らす都。

 空気を読んでくれたようで助かった。

 正直、俺が魔王を殺す為に行動していた理由なんて簡単だ。

 都を殺した魔王軍に対する私怨以外の何物でもない。

 ただ、それを知られる訳にはいかない。


「まぁ、つまりだ。本当に仲間として同じ土俵に立って一緒に戦うのなら人間以外が良いと思っているってことだな」

「それなら、ご主人様」

「どうした白亜?」


 少し考え込んでいた白亜が口を開く。


「烏天狗を仲間にしては、如何ですか?」

「烏天狗?」

「はい。烏天狗は、牛若丸に剣の手ほどきをするほど剣の扱いに長けた妖怪。神通力も有しており、仲間にするには打ってつけかと」

「なるほど……」

「優斗、牛若丸は、源義経の幼名だから」

「ああ。そのへんは大丈夫だ」


 都に言葉を返す。

 一応、源義経は剣術に秀でているから、戦いの知識と言う事で奪われることはない。


「そうなると、烏天狗に会いに行く必要があるな。白亜は、烏天狗とは知り合いだったりするのか?」

「――いえ。妾は、烏天狗よりも、ずっと後に誕生しましたので……、それに岩代――、今は喜多方からは福音の箱の件で移動できませんでしたから」

「役割があって動けなかったという訳か。それなら、烏天狗について詳しい人間は……」

「マスター。烏天狗は妖怪の部類。神社庁なら詳しい資料があるはず。あと陰陽庁も知っている人間は多いはず」

「たしかに……」


 それは盲点だったな。





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