第522話
「そうですか……」
深く聞くこともせず神谷が引き下がった。
聞きたいことはあるだろうが、深く詮索してこないあたり、俺の意図を読み取っているのか、それとも――。
「そういえば、神谷」
「はい」
「学校の手配の方はどうなっている?」
「それに関しては数日の内に教育委員会と文部科学省の方が、山城理事と交渉をするそうです」
「そうか……」
それなら、学校が再開するまで、そんなに時間が掛かる事もないか。
「それと長野県警からですが、桂木警視監が辻本氏容疑者の取り調べを手伝うと言う事を先方に伝えたところ、早めに取り調べを行いたいという意向を書面で送ってきました」
「ふむ……」
「やっぱり警察としては早めに対応したい物なのか?」
「それは、マスコミ関係者や警察庁上層部からもせっつかれますから――」
そうなると、早めに対処した方が良いと思うが――、できれば言い方が悪いが利用させてもらいたい。
「長野県警には、取り調べについての日程に関しては追って知らせると伝えてくれ」
「それは、取り調べ期日は未定と言う事で?」
「まぁ……な」
話が一区切りついたところで、
「また何かあったら連絡してくれ」
「分かりました」
千葉県警察本部を出たあとは徒歩で自宅へと帰る。
自宅に到着したのは、既に午後4時を過ぎ。
「ただいま」
ドアを開ける。
「お帰りなさい、優斗!」
「ああ。ただいま」
「あれ? 白亜は?」
「さっき、住良木さんが来て一緒に神社庁に行ったわ」
「神社庁に?」
「うん。優斗は仕事は終わったの?」
「まあな。俺が居ない間、何か変わりは無かったか?」
「特にないわね。何か飲む?」
家に上がりリビングのソファーに横たわったところで、都が話しかけてくる。
「それともお風呂? もしくは私?」
「飲み物くらいは自分で取ってくるから――」
寝ながら答える。
都の戯言をスルーしつつ、無難な答えを返しつつ、テレビをつける。
「もう、優斗ったら……。せっかく二人きりなのに……。ねえ、優斗」
「どうした?」
「純也のことだけど……」
「純也が、どうかしたのか?」
「純也って大丈夫だったの? 優斗と、一緒に居たから大丈夫だと思うけど」
「いまは入院中だな」
「入院中!? そ、それって大丈夫なの?」
「まぁ、大丈夫だが――、崩壊した学校の件もあるから、それらの対応を含めて、純也は警察病院で軟禁中だな」
まぁ、正確に言うのなら四条凛子という存在を整理するまでの間、横やりを入れられると困るから意識を数日奪っているだけだが……。
「――そ、それって……、純也が学校の敷地内に居た時に学校が大変な事になったから、その責任を取らされるってことなの?」
「――いや、四条凛子という俺が女装した情報を隠蔽するための間の時間稼ぎの為に軟禁しているだけだ。四条凛子に猛烈にアタックしていた純也が、じつは中身が俺だった事が分かったらショックを受けそうだからな」
「そういえば……、お父さんは違う意味でショック受けていたよね」
「まぁ」
それは、都の親父さんが悪いから、まったく俺には罪悪感はない。
ただ純也に関しては、話は別だからな。
それに純也には、戦場というのはどういったものかを理解する上でも、重要なことになるだろうから――。
「それは、それ。これは、これだな――」
「どういう意味なの?」
「都の親父さんと、純也では扱いが違うってことだ」
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