第509話
しばらくしてから、通報を受けた警察のパトカーが次々と学校周辺に集まってくる。
パトカーが10台を超えたあたりで、学校の敷地内に警察官が入ってくるのが見えた。
「前鬼、しばらく意識を遮断する。お前達も、姿を消しておけよ? 見られたらマズイからな」
「『承知しておる』」
前鬼の姿が消える。
「『それではな。主の友人よ』」
後鬼も姿を消す。
そして残されたのは、俺と純也だけ。
波動結界で周囲を確認したあと、敵性存在が無い事を確認したあと、俺は意識を遮断した。
眩しい日差しの中で意識を戻した俺は、部屋の中を見渡す。
「ここは……」
見渡せば、部屋の隅にはパイプ椅子にアディールが微動だせずに座っていた。
そっと目線を逸らして部屋の中を見ていく。
部屋には、ベッドが一つしかない。
どうやら個室のようだ。
天井を見上げれば――、
「知らない天井だ」
「マスター。どうして、エリカから目を逸らして、そんな発言を?」
「ちょっと言って見たかっただけだ。それで、ここは病院だよな?」
俺は知覚できる範囲で波動結界を展開しながら周囲を確認しつつ、アディールに確認の為に聞くが――、
「神谷が手配した。中野区の警察病院」
「なるほど……。そいつはおあつらえ向きだな。普通の病院だったら不審に思われるからな。それで――」
「都の事は問題ない。白亜が、護衛に入ってる」
「そうか」
俺が学校で戦った連中は、少なく見積もっても魔王軍で言えば序列4位相当。
今の俺でギリギリ勝てる程度だ。
勝てたのは、戦闘経験が圧倒的にアイツらは足りていなかっただけ。
「純也も、ここで入院しているのか?」
「うん」
短く答えてくるアディールは、俺の方を見てくると口を開く。
「マスター。神谷から、今回の事件の顛末を早急に上げて欲しいと託を受けている」
「だろうな。――で、今の時刻はと……」
「マスターと純也が発見されてから、8時間が経過した」
「つまり、学校は、始まっているということか」
「そう。でも休校中。だから、神谷からすぐに情報を上げて欲しいと」
「ということは、山王高等学校側にも事情を説明する必要があるってことか。つまり口裏合わせだな」
頷くアディール。
まぁ、明らかに人間を超える力を持つような連中が襲撃を仕掛けてきたからな。
警察側としても、情報を早く得たいというのは当たり前だろう。
何せ、学校が一つ崩壊したのだから。
ニュースを流そうにも、何も分からなければ情報操作もおぼつかないからな。
俺はベッドから降りて患者用の衣服から、籠の中に置かれていた女子のブレザーに着替える。
「マスター、医者に事情を説明は私がしておく」
「そうか。――なら、あとは任せた」
「任された」
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