第508話
砕けた結界――、崩れ落ちていく世界の有様。
降り注ぐ破片の中で、身体強化したまま上空へと視線を向けると、そこには白亜と二人の人間の姿が確認できた。
俺は、そのまま校舎の屋上を蹴り上空へと一瞬で舞い上がる。
「白亜。何をしていた?」
「ご主人様! すみませぬ。こやつらが、学校に結界を張っていた連中です」
「ほう」
俺は、女と男の二人組に視線を向ける。
「……イーク。逃げて……、結界を……、抵抗すら許さずに破壊した……、あれは……至精霊の力じゃない……」
俺と白亜が見ている前で意識を失い、自由落下を始める女。
男は空高くから落ちた女を拾い上げると、滞空している俺と白亜を見上げてくると、姿を消した。
「逃げられたか」
「ご主人様、どうやらやつらも風と同化して移動する事が可能だった様子」
「白亜と同じことが出来るってことか」
「はい。それよりも申し訳ありません。あのようなモノ達の干渉を許してしまうとは――」
「問題ない。誰も死んではいないからな。問題は――」
俺は、学校敷地内へと視線を向ける。
そこには完全に崩壊した学校の様子があった。
「事前とまではいかないが、千葉県警に連絡をしておいてよかったというべきか……。また教育委員会と文部科学省との取引が必要になるな」
思わず俺は溜息が出る。
「それで、これからどうしますか?」
「とりあえずは、神谷に後始末をさせるしかないな。それと――」
学校の屋上。
ほぼ半壊した屋上には、式神が2匹立っており、その傍には純也が寝かされているのが見える。
「あとは演技次第と言ったところか」
「演技ですか?」
「ああ。細かいことについては、あとで説明する。白亜は、エリカから警察へ連絡をするように伝えておいてくれ。俺は屋上で倒れていて何も覚えていない事にする。あとは警察が現場検証や事件性の有無と捏造するって流れになるか」
「それは、事件を隠蔽するという……」
「そうなる。あとは、任せたぞ」
「はっ」
屋上へ降り立ったところで式神が此方へ近づいてきた。
「桂木優斗」
「前鬼、話はあとだ」
俺は純也に近づき肉体の修復と3日間、意識が戻らないようにと肉体操作をしておく。
「さて――、これで話が出来るな」
「『主は?』」
「脊髄に損傷、数か所の骨折程度だった。今は治療したから問題ない。意識が戻るのは3日後にしておいた」
「『どうして3日後に?』」
「この体と身分の処理があるからな」
「『なるほど……。その女子の体で生きるという訳では……』」
「そんなこと、する訳がないだろ。それよりも、さっきの襲撃してきた連中に関して聞きたいことがある」
「『……わかった。主を生かしてくれたのだ。そちらの誠意に応じて答えるとしよう』」
前鬼は、渋々と言った様子で応じてきた。
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