第507話
黒のスーツを着た男が提案してきた内容に対して俺は――、
「好きにすればいいのでは?」
「――なっ!? あ、アナタは、彼を大事には思ってはいないのか!?」
俺は笑みを男に向ける。
この俺の瞳を見たスペルダークと自己紹介してきた男は数歩下がる。
「戦いの場において、負けることは死を意味する」
俺は、腰まで伸ばしていた髪を手で払いながら言葉を口にするが、男は俺が何を語っているのか目を見開いたまま、ただ聞いているだけ――、
「そして死というのは戦場では、誰しも、その身に平等に降りかかるものだ。だから、命のやり取りをする場では――、少なくとも俺の前では戦士の命乞いや、戦士を人質に取るような交渉は無駄であり、無意味だ」
男に近づく。
男は微動だもせずに動くことも能わず俺を見ているだけ。
「純也を殺したいなら、殺せばいい。アイツも式神を使役して戦いの場に立った以上、戦士だ。だから、純也を引き合いに出してきても、俺が言う事を聞くとは思うなよ?」
距離にしては1メートル。
男を見上げて足を止めた俺は笑顔を向ける。
「――だが、一つ忠告しておいてやる。もう、理解することも、悔い改めることもないと思うが――、純也に手を出すと言う事は、俺の身内に手を出すと言う事だ。お前が、どこまで俺を理解しているかは知らないが――」
そこで俺は、殺気と共に――、
「俺の身内に手を出すのなら、貴様は俺の敵だ。敵は、どんな手段を使おうと殺す。ソイツの親族から、遠い縁戚関係の人間だろうと遺伝子を解析して殺し尽くす。その覚悟があるのなら、俺に喧嘩を売れ。中国の連中みたく数千万単位の死者を出す覚悟があるのならな」
「――なっ!」
俺の言葉に顔色を変えると同時に、男が蹲る。
「かっ――カハッ……」
顔を真っ青にして、必死に息を吸おうとしているが、体中が痙攣しているのか動かない――、否! 動かすことすら許さない。
「どうした? 動かないのか? 動かないのなら死ぬぞ? 小僧」
周囲に振りまいた巨大な殺気による重圧。
それにより相手の生存本能を狂気させ狂わせ身動きを――、その行動を阻害する。
俺が時間を稼いでいる間に、後鬼が意識を失った純也を抱えて俺から距離をとるのが見える。
どうやら、俺の考えを読んでいたようだな。
男の首を掴み、持ち上げる。
「な……、その細腕に……、どこに……僕の体を……持ち上げるだけの力が……」
「答える馬鹿がいるのか? 戦闘時に」
男の体を空中へと投げると同時に、上段蹴りで、さらなる上空へと吹き飛ばす。
どんな力を有しているのかは知らないが――、
「とりあえず死んでおけ」
右手のひらを頭上へと――、上空へと蹴り飛ばした男へと向ける。
そして、周囲に粒子――、原子の位相を変化させていくと同時にエネルギーを作り出す。
「『魔光弾』」
生成した反物質を男へと向けて放つ。
反物質は、男が前面に作り出した闇と接触し――、巨大な爆発を引き起こす! だが、その爆発の中を突き進む2発目の反物質砲が、男の腹部を貫き、上空の結界と接触し、結界を粉々に破壊した。
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