第506話

 勧誘しにきたと言われてもな……。

 俺のプランを悉く破壊した上に、そんなことを言われても普通は断るんだが?

 だが、俺が考え込んでいてもスペルダークという男は、にこやかに俺を見据えてきているだけで殺気を向けてきてはいない。

 そして威圧もしてこないとなると、勧誘は成功すると思っているらしい。

 それにしても話し方が一貫しないやつだ。

 さて、どう対応するべきか……。


「勧誘ということだが、お前達の目的を教えてもらいたい」


 まずは相手の狙いを聞き出すのが先決か。

 白亜が用意した怪異を乗っ取って利用する手際といい、純也の式神を一蹴する能力といい、魔王軍の序列4位くらいの力は有していると見た方がいいからな。


「僕たちの仲間になれば自然と理解できると思います」

「つまり、答えるつもりは無いということか?」

「答えるも何も、守護者になれば自然と理解できるかと」


 つまり、役割を得れば自然と守護者の役割に準ずる存在になると言う事か?

 それは洗脳と大差がない。


「なるほど。それでは、組織の規模については教えてはくれるのか?」

「それを聞いて、どうしようと考えているのですか?」

「相手をヘッドハンティングしたいのなら、企業の規模を教えるのは道理ってモノだろう?」

「そうですね……たしかに……、アナタの言う通り」

「――なら」

「残念ながら仲間になっていない方に教えることはできません。――それでは、僕たちの仲間になるかどうか決めてもらえますか? こちらも手ぶらで帰ると管理者が煩いので」

「なるほど……」


 ほとんど情報という情報はないが――。


「それでは仲間になって頂けるということで?」


 俺は頭を左右に振る。


「悪いが、断らせてもらう。組織の全体像も教えられない。目的も教えられない。そんな怪しい連中とつるむわけがないだろ?

「なるほど……、たしかに……」


 随分とアッサリと引くな。


「――では、お仲間の命と引き換えに付いてきてくださいという交渉はどうでしょうか?」

「何?」

「ですから、そこに倒れている中途半端な霊能力者。その命と引き換えに、付いてきてくれるだけでいいので、一緒に来て頂けませんか? こちらとしても桂木優斗という名前は男性の名前と思っていたので、こんなに綺麗な女性だと、さすがに暴力で従わせるというのは気が引けますので、どうでしょうか?」


 男が笑みを浮かべて指を鳴らす。

 すると周囲の暗闇から無数の影が這い出ると共に、影が集まり黒い塊に――、人を模した姿へと形作っていく。


「さて――、四条凛子さん。そこの出来損ないの霊能力者の命が惜しくないのでしたら、抵抗してくれても構いませんが――、そうでないのでしたら、御同行をお願いします」


 





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