第504話 第三者side
――山王高等学校が借りている元・真砂中学校の上空には2つの影が存在していた。
一つは、10本の尾を生やし戦闘態勢へと移行していた空弧の白亜であり、もう一つの影は、緑色の髪を持ち鋭い眼差しをした男であった。
「何者だ? 主らは――」
「おい、ルアル。結界の維持は出来ているんだろうな?」
白亜の殺意を含んだ声を平然と無視しながら、少し離れた場所で空中に浮かんでいるピンク色の髪の女に話しかける男。
「問題ない。結界は維持している」
「そうか。アレとの接触はどうなっている?」
「無事出来たみたい。ただ――」
「ただ?」
「安倍晴明の式神がいる」
「ほう……。そいつは1000年前と同じことになるかもな」
「それは困る」
「おっと!」
男は、自身に飛来していた3メートルは超える狐火を避けると視線を白亜へと向けた。
「この白亜を無視するとは、言い度胸じゃな。主らは――」
「おいおい。俺達は、別に殺し合いに来たわけじゃないんだぜ?」
両手を広げる男。
「なら――主らは――」
「やれやれ――。従属ごときに俺達が自己紹介する必要性は感じないんだがな」
「イーク。ことを構えることは許されていない」
「わーってるよ!」
溜息をつきながら髪の毛を掻きむしり――、
「俺の名は、イーク。イーク・ルシフェル。風を司る魔神だ。――で、アイツが――」
「私は、ルアル。ルアル・ルシフェル。陣を司っている」
「――で? あんたは、桂木優斗と契約した野狐、白亜だったけか?」
「何故、妾のことを……」
「そりゃ、こっちも仕事柄、その程度のことはな――。それよりも、こっちとしては、いまは人間とことを構えるつもりはないんだわ。だから、少しだけ大目に見てくれないか?」
「それを、妾が許すとでも? 我が主の害と為すことを――」
「だから、こっちも上からの指示で動いているだけなんだって。そこんとこ理解してくんないかな?」
学校の上空1000メートル付近で浮かびなら、飄々とした表情で――、ただし眼だけは鋭く白亜からの殺気を受け流しながら言葉を口にする男。
「それに、アンタだって、俺達の力は分かっているんだろ? だから、互いに身動きが取れていない。そうだろ?」
「――ッ」
イークと名乗った男を睨みつけながらも白亜は、身動きが取れないことに苛立ちを募らせていた。
「(こやつ……、戦闘能力で言えば、妾と同等かそれ以上か? それになのより、風の神通力が封じ込められている点で言えば……、何者だ? こやつらは……)」
「分かってくれて助かったぜ。こっちともしても、空弧レベルの妖怪を相手にすると、さすがに骨が折れるんでな」
「貴様ら――」
「そんなに殺気を向けないでほしいな。アンタと俺が戦ったら、この付近の人間は、余波で全員死ぬことになるぜ? まだ、その時じゃないんだから、余計な真似はさせないでくれよ?」
「……(その時ではない? つまり、遅かれ早かれ人間を殺すということか?)」
白亜は、イークの言葉を聞きながら考察を重ねたところで、学校を囲っていた血のような赤い結界に罅が入っていく。
「イーク!」
「どうしたよ? ルアル」
「結界が破壊される」
「は? お前の結界をか?」
3人が下を見ると同時に結界が音を立てて砕け散った。
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