第502話

 まったく余計なところで力を使うとは……。

 だが! その気持ちは分からなくないがな! 同じ男としては!

 

「しかし、超音波攻撃とは……」

「『お主の企みではないのか?』」

「馬鹿を言うな。下手したら脳に障害が残って視神経に麻痺が出るだろ。そんな真似はさせない」

「『そうなると――』」

「別の第三者が、この結界に関与している恐れがあるな」


 後鬼と会話しつつ、波動結界で建物内を調べる。

 あと、4か所、空間が隔絶されていて調べることが出来ない場所がある。

 おそらく、それが七不思議の場所なのだろう。


「『桂木優斗』」

「どうした?」

「『先ほどから神域を展開しているようだが、何をしているのだ?』」

「この空間の地形MAPを確認していただけだ」

「『そのような事が出来るのか?』」

「まあな。それより純也に知らせてもらいたいんだが、いいか?」

「『それは出来ない』」

「何?」

「『現地や建物内を注意深く探索し調査することも修行の一環である。地形や怪異の場所が分かれば、それ以外が疎かになり、長時間緊張を保つ術を身につけることが出来なくなるからの』」

「……お前、色々と考えているんだな」

「『とことん失礼な人間だな。これでも数千年は生きておるのだぞ?』」


 その言葉に、俺は肩を竦めた。


「凛子さん。大丈夫でしたか?」


 話が一段落したところで、体調が持ち直した純也が近寄ってくる。

 まぁ、俺は距離が離れていたから超音波攻撃は殆ど受けていないが。


「は、はい。大丈夫です。それよりも変な幽霊がいるのですね」

「そうですね。それよりも凛子さんは、幽霊とかに慣れているんですか?」

「――いえ。もう鬼がいる時点で驚くはあれかな? と、思いまして――」


 もう今更だろう。

 式神を常時見せているのだから、幽霊ごときで驚くくらいなら、式神と会話なんてしない。


「凛子さんって、思ったより準応力が高いんですね」

「よく言われます」


 まぁ、実際は数万の死霊軍団を一人で殲滅した事があるからな。

 それと比べたら、たいしたことない。


「それよりも純也さんこそ、体の方は大丈夫ですか?」


 俺は、純也の手を握り、破損していた細胞を瞬時に修復する。

 純也と言えば驚いた顔をして顔を真っ赤にしたあと、慌てて俺から距離をとる。


「は、はい。だ、だだだ、大丈夫です」

「そうですか。よかったですわ」


 笑みを向ける。

 まぁ、とりあえず致命的なダメージは受けてなくて良かった。


「あれ? 体が軽く……」

「純也さん。七不思議は、あと4つですね! 手掛かりを含めて頑張りましょう!」

「頑張ります!」


 美少女として鼓舞する声に、元気よく答えてくる純也。

 コイツは、ちょろいなー。

 将来が心配になるレベルだ。

 

「それでは凛子さん! 少し離れた位置から付いて来てください! 後鬼! 凛子さんを死んでも守れよ!」

「『……分かっておる』」


 純也は意気揚々と歩き出す。

 ある程度、離れたところで――、


「『まったく、イイ性格をしているな? 桂木優斗』」

「何のことか分からないな」

「『あと主の霊力が回復したが、何かをしたのか?』」

「おそらく超音波攻撃の影響だと思うが、細胞が損傷していたから修復した。それだけのことだ」

「『治癒の力と言ったところか』」

「まぁ、そんなところだな」


 純也の後ろを付いていき、1階には何もない事が確認できたあと、2階へと繋がる階段を上っていく。

 2階に到着したところで、すすり泣く声が聞こえてくる。

 発生源は――、


「女子トイレか」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る