第501話
「とりあえず何かあったら、俺よりも純也を守れよ?」
「『分かっておる』」
二つ返事で後鬼が返答してきたのを聞いて、俺は前の方を歩いている純也へと視線を向ける。
一般人の視界から見たら、殆どと言ってもいい程の暗闇の中を歩くこと5分ほどで、ピアノの音が聞こえてきた。
「3個目の学校の七不思議ってやつか……定番だな」
「『ふむ……』」
「どうかしたのか?」
俺は、後ろを歩いている後鬼に話しかける。
「『我も学校の怪談とやらは、陰陽師に使役されていた事がある故、ある程度は、知っておるが、このように別々の心霊現象として発現するのは些かおかしいと思ったのだが……』」
「そうなのか?」
「『うむ。どう考えても何かしらの意図があると見た方がよいだろう』」
「そうか」
前方を歩いている純也と前鬼の足が止まる。
どうやら音楽室の扉の前に到着したようだ。
「『どうする?』」
「とりあえず、純也が、どう対処するのか高みの見物だな」
「『ちなみに、お主なら、どう対処するのだ?』」
「俺は、学校ごと丸ごと消し飛ばして空間を破壊してさっさと出るか、最初から関わらない」
「『お主のは参考にならんの』」
「それは光栄だな」
俺は肩を竦めて返答する。
そうこうしている間に、純也が音楽室の扉をスライドさせて開ける。
それと共に大音量の音楽が20メートルほど離れている俺のところまで聞こえてくる。
もちろん、俺達よりも、近い場所にいた純也と言えば、両手で耳を塞いだまま身動きが取れずにいる。
そんな純也に、髪の毛をクルクルとカールさせた細身の男が近づく。
「あれは……、ベントーベンか?」
「『違う。モーツァルトだ。そしてベントーベンなんて作曲家は存在していない』」
「何?」
「『お主は、勘違いしているが、ベントーベンではなく、ベートーヴェンだ』」
「……言い間違いは誰にでもあるよな」
「『演奏している曲は【レクイエム】。中々に凝った作りの妖怪と言ったところだな』」
「妖怪?」
俺達が見ている中、ピアノを純也の頭上に向けて振り下ろす妖怪に、粉々に砕け散るグランドピアノ。
「ほう。身体強化か」
純也が、体中に薄っすらと銀色の衣を守っているのが見える。
それは、異世界で言う所の身体強化魔法。
「『霊力による身体強化であるが、あれは――』」
「何かあるのか?」
「『いや、何時もよりも強化レべルが高いと思ったのだが――』」
言葉を濁す後鬼。
だが、俺が見ている中で純也は、こちら側を、チラリを見てきたかと思うと手のひらから光の玉を発射し、細身の男の体を吹き飛ばす。
「一応は、戦闘は、それなりに行えるレベルってことか」
純也が、こちらへと手を振ってくる。
「『なるほど。主は、お主にアピールする為に、普段よりも身体強化レベルを高くしたと言ったところか』」
「つまりカッコいいところを見せたいってことか」
「『身も蓋もないとそうなる』」
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