第498話

 学校内の敷地を、純也と一緒に見て回る。


「何もないですわね」


 校内には入っていないが、外の敷地を見た限りでは、学校に何か違和感というのは感じない。

 おそらく二宮金次郎の石像から始まった怪異から見て、学校内に七不思議は集中している事から校内が怪しい。

 問題は、建物内での戦闘は、経験がモノを言うから、新人の純也には俺を守りながら戦うのは難しいという点。

 要人を警護して危険な場所を切り抜けることを考えると、普通は占領し安全を確かめていない建物の中には入らない。

 それが鉄則だ。

 まぁ、この場合は、外で待機するのがいいだろう。

 何故なら、学校内の敷地内の結界内に閉じ込められたのだから、すぐに外部へおかしなことは伝わる。

 そうなれば、外部の人間が警察へ通報したあと、神社庁が動くのは目に見えている。

 住良木か東雲が助けにくれば打破できる問題だからな。


「凛子さん」

「はい」


 やっと自分で脱出できないと悟ったか。

さて、あとは外の花壇に座って時間を潰すとするか。


「校内の調査をしましょう。外をこれだけ見ても何も発見できなかったという事は、二宮金次郎の石像の事も考えて、学校の七不思議に準えたモノかも知れませんから」

「え?」


 コイツは何を言っているんだ?

 そもそも、こっちは一般人で、深窓の令嬢設定だぞ?

 そんな人間の前で、超常現象と相対するとか、一般国民に知られたくない日本国政府が、どれだけ情報隠蔽に動いているのか理解していないのか?

 それとも、東雲は教えていないのか?」


 ――いや、アイツが教えないということはないな……。

 となると純也の独断専行という可能性が……。


「あの、純也さん」

「どうかしましたか?」

「わたくしとしては何も起きていない校庭で助けを待った方がいいと思います。純也さんと一緒に学校の敷地内を見て回りましたけど、何も見つかりませんでしたよね? それって、何も起きないと言うことだと私は思うのです。それに、わたくしは、足手纏いになりますから……」

「大丈夫です。安心してください! 凛子さんは、俺が守りますから!」


 駄目かー。

 コイツ、昔から一つの事に集中すると、一辺倒になるからな。

 駄目元で誘導しようとしたが、駄目だった。

 仕方なく、俺は頷く。


「それじゃ、行きます」


 純也が上着を脱ぐ。

 そして、1階の職員室の窓に左手で添えたあと、右肘で窓ガラスを砕く。

 ガシャーンという音と共に、窓ガラスが粉々に砕け、当たりにガラスの破片が撒き散らされた。

 これ、結界が解けて元の世界に還元されたら窓ガラス代取られそうだな。

 俺が見ている中、純也は職員室の窓ガラスを飛び越えて中へと入っていく。

 しばらくして、何かの施錠が開錠される音が聞こえてきた。

 すぐに職員室側からの大きめのスライド式の扉が開く。


「凛子さん。これで中に入れます」

「……純也さん。ここの窓、壊して大丈夫ですか?」

「良くは無いと思いますが非常事態ですから」


 まぁ、非常事態というのは理解はしているんだな。




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