第497話

 さて、どう反応するべきか。

 一般人なら、こういう場面では――、


「――り、凛子さん!?」


 とりあえず、俺は、その場に座り込む。

 そんな俺を見て、純也が目を見開くと驚いた表情を見せる


「すいません。こ、腰が抜けてしまって……」


 冒険者時代には、令嬢をドラゴンから守った時に、こういうシチュエーションがあったなと思い出しながら演技をする。

 

「――ッ」


 俺の言葉に悲痛な表情を見せる純也。


「あ、あの……、純也さん。私達は一体、どうなったのでしょうか? どうして、学校の外に灯りが見えないんでしょう?」

「それは――」


 純也が、俺に本当のことを言っていいのかどうか迷っているか、もしくは現状を今だに把握していないのかどっちか。

 それによって純也が現状をどこまで把握しているのか分かるが――。


「まだ分かりませんが、とりあえず――、凛子さんは俺が守ります!」


 分かってない方だったかー。

 東雲は、純也に何を教えているんだ?

 純也と会話しながら、波動結界を周囲に展開しておくが、どうやら結界により外部から完全に隔離されているということだけは分かった。

 そして、その証拠に外部との通信が完全に遮断されている。

 問題は、通信遮断されているのがエリカだけでなく白亜ともされているという点。

 俺が出来るだけ実戦に沿った方法で純也に戦場の経験をさせるようにと白亜に命令したが、ここまでするとは思っていなかったが……、まあ、何とかなるだろ。

 いざとなれば、空間を斬り裂いて脱出すればいいからな。

 唯一、救いなのは一般人には結界内で隔離された場所で起きた出来事については感知されないという点か。

 思考していると純也が手を伸ばしてくる。

 その手を取って、俺はゆっくりと立ち上がる。


「もう大丈夫ですか?」

「は、はい。それよりも純也さんは、一体、何者なのですか?」

「――え?」


 あくまでも一般の深窓の令嬢設定の俺は、一般人が聞き返すように純也に問いかける。

 普通の人間から考えたら石像が動いて攻撃してくるなんて考えないからな。

 

「お、俺は……一般人です。普通の高校生の――」

「本当なのですか? 石像を、壊していましたよね?」

「そ、それは――、凛子さんの気のせいです」

「そうですか……。それよりも、純也さんは、随分と落ち着いているのですね。私は、先ほどから不安で不安で――」


 体をわざと震わせながら、純也に語り掛ける。


「あ……。凛子さん……」

「純也さん?」

「――な、なんでもないです……」


 唇を噛みしめて悲痛な横顔をした純也は、すぐに笑みを浮かべる。

 おそらく一般人には、危険な状況だと言う事を知られたくないという配慮からだろう。


「まずは、ここが何なのか調べてから対策を取りましょう」

「分かりました」


 純也の提案に頷く。



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