第495話
週末の金曜日の夜の学校――。
その校門前に集まっている男女の集団。
その中にはもちろん、俺や純也に都も含まれていた。
「どうして、都さんが此処に?」
「四条さんが心配で参加してみたの」
「そ、そう……。でも、今日は、純也さんと一緒に回ることになっていて――」
そもそも肝試しをデートに使おうとか、少し考えればおかしいと思うんだが……。
まぁ、伝説の木の伝説みたいな変なオカルトに被れているとデートに利用するという変な奴も出てくるんだろう。
まったく……、ろくでもない。
とりあえず、今日は、純也の修行の成果というかだらけている純也に活を入れる為に、態々参加したのだから、都と回るわけにはいかないと言う事だけ伝えておく。
「私としては四条さんと回りたいけど?」
それでも引き下がらない都は、そう言いながら、俺の耳元に口を近づけてくると、小さい声で「純也と恋仲になったらどうするつもりなの?」と、聞いてくる。
俺もすかさず小声で、「そんなことはない」と、短く答えておく。
「それじゃ、凛子さん、行きましょう!」
「そういえば、純也さん」
「何でしょうか?」
「学校の敷地内に入るための許可はとっているのですか?」
「……あ、はい」
純也の挙動からどう見ても、敷地侵入許可を取ってないパターンだと当たりをつける。
まぁ、何かあったらあとで弁償すればいいか。
「(エリカ、聞こえるか?)」
小型マイクに向けて小声でエリカへ話しかける。
「(マスター、感度は良好)」
「(都の護衛を任せる。しばらくの間、白亜は、此方に神経を集中する事になるから、宜しく頼んだぞ)」
「(了解した。それとマスター)」
「(何かあったのか?)」
「(私の方から神谷に連絡して許可をとっておく。気兼ねなくやっていい。新人には、厳しく指導しないといけない)」
「(そ、そうか……)」
どうやら、エリカから見たら、純也の修行は遊んでいるように見えるようだ。
「凛子さん、どうかしましたか?」
「――い、いえ。外から見るだけでも昼間とは違って学校というのは暗いと思いまして……」
「大丈夫です。何かあれば自分が守りますから」
「期待していますね」
純也に手を引かれ校門を乗り越えたあと、俺と純也は二人して校庭を横切る。
すでに町明りは、校庭には届いておらず暗い。
「純也さん。他の方は、順番に肝試しをするのですか?」
「そうですね」
「それって、私達が戻ってきたら始める感じですか?」
「はい。その方がいいでしょう?」
「そうですか……」
それなら遠慮はいらないな。
俺と純也は、真っ暗な中、校庭を横切り校舎へと近づいたところで石像が見えてきた。
それは二宮金次郎の石像。
「知っていますか? 凛子さん。ここの学校の石像は動くっていう七不思議があるんですよ」
「そうなのですか」
そんな他愛もない話をしながら石像へと近づいていく純也。
「はい。まぁ、いままで何十回と肝試しを学校の生徒はしていますが、何も起きた事はないですけどね」
純也が自信満々に告げたところで、唐突に石像の目が赤く光り、二宮金次郎の石像が動き始める。
「――え? 純也さん。石像が!」
「どうかし――うおっ!?」
唐突に二宮金次郎の石像が動き出すと同時に、手に持っていた石作りの本を振り下ろしてくる。
咄嗟に本からの強打から避けた純也は顔を上げる。
「な、何が……」
「――じゅ、純也さん、石像が動いています!」
「まさか、ありえない」
驚いた声を上げながらも純也は石像から距離をとる。
そして石像が石の本を振り下ろした地面は、綺麗に1メートルの範囲で陥没していた。
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