第488話

 そう言葉を呟いた途端、都が目を細める。


「駄目よ、優斗」

「俺は、まだ何も言っていないが?」

「優斗、四条薬局を購入したんでしょう? だったら、自分が抱えている社員の生活は、社長がきちんと責任を持って管理しないと駄目」

「分かった」


 都は、いったん決めたことは曲げることは無いからな。

 仕方なく俺は引き下がる。

 それから、しばらくして生徒が登校してきて朝のホームルームから、授業へと、何時もの流れになる……、はずだったが……。


「ねえ。四条さんは、どう思う?」

「えっと、何の話でしょうか?」

「うちの学校の七不思議の話!」

「七不思議って、妖怪とか幽霊のですか?」


 都が教師の手伝いで居なくなったタイミングを見計らったように女子たちが話しかけてきた。


「そうそう。真砂の七不思議って、七つの不思議を見た者は、伝説の木の下で告白すると一生が結ばれるって話があるみたいなのよ」


 そんなことを女子学生たちが話した。

 正直、伝説の木なんてあったか? と、俺は思ってしまうが――、どうやら女子生徒の話だと七不思議全てを体験しないと目の前に現れないとか。

 それにしても、どうして、そんな話がいきなり出てくるのか不思議でならない。


「それでね! 四条さんは、もうすぐ四条さんのお父さんのお仕事で転校するのでしょう?」

「は、はい……。とても残念ながら……」

「それでね! 四条さんの転校する前に、思い出作りに、伝説の木を探してみない?」

「えっと、私は、夜は寝ないと……」


 七不思議って、全部を知ったら死ぬとか、そんな感じじゃなかったか?

 だいたい伝説の木の下で告白とか何だよ、無理矢理こじつけにも程があるだろ。

 それに、そんな非科学的なモノが存在しているわけがないし、この学校で問題が起きているようだったら、住良木が片付けているはずだからな。

 よって、そんなモノは存在しない。


「凛子さん、俺と一緒に行きませんか? 俺、そっち系は得意なんですよ!」


 女子同士で話していたら、純也が横から割って入ってくる。

 そりゃ、お前は霊力も霊視の力もあるし、式神とも契約しているから、そっち系は得意なんだろうよ。

 そもそも霊力関係の仕事については一般人にはタブーだし、誤解を受けるような発言は控えた方がいいと思うぞ?


「私は遠慮させていただきます。遅い時間帯の行動は、お父様や執事に心配をかけてしまいますから」


 キチンと断っておく。

 そもそも、もうすぐ女装して登校する期間は終わりなのだから、余計なことはしない方がいいからな。





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