第485話 神楽坂都side
どこまでも続く暗く昏く淀んだ世界――、周囲を見渡せば、血よりも赫い液体が、空から延々と降り続いている。
「ここは……、夢?」
余りにも現実離れした世界に、わたしは――、いま見ている全てが、夢だと言う事を、すぐに理解することが出来た。
服は寝る時に着ていたパジャマのまま。
「何時もと見ている風景が違う?」
私の声は、まったく反響する事もなく周囲の空間に広がっていく。
それだけで、自分がいる場所が、広大である事の証に見える。
裸足のまま、足元から感じるのは、ヌルりとした感触と鉄錆の匂い。
むせ返るような匂いから、足元に溜まっている――、足首まで浸かっているのが血だと言う事を私は分かってしまった。
「それじゃ――、上から降ってきているのは血ってことなの? ――でも、ここって……どこなの?」
周囲を見渡すけど、私が立っている場所を中心として、どこまでも赫色が広がっている世界しか見えない。
世界そのものが赤く紅く赫く空間ごと染まっている――、そんな感じ。
いつもと違う風景に、私は混乱しつつも一歩踏み出そうとしたところで――、パシャッ! と、言う音が背後から聞こえてきた。
「誰?」
振り返る。
すると、そこには紫色の瞳に、長い紫色の髪を持つ女性の姿があった。
女性は、私の声に反応し――、口を開いた。
「あなた、誰なの? どうして、ここにいるの? ここは、資格者以外は立ち入ってはいけない事になっているのに……」
女性は、先ほどまで無表情だったのが嘘かのように険しい表情をし、私を値踏みするように見てくると――、
「輪禍の――、そういうことね。レイネーゼ……、いえ、シヴァリエ。貴女……、そういうことだったの。だから……」
「え? りんか? レイネーゼ? シヴァリエ? 何を言っているの? 貴女、誰なの!? ここは一体どこなの?」
「罪の災禍の召喚士。貴女に答える義務はないわ」
女性は微笑みと、私の方へと手のひらを向けて――、
「またね。災禍の召喚士シヴァリエ・ド・ウル・リメイラール。全ての罪を――、罪過を一人に負わせた愚者の王女」
「何を言って――」
私は手を伸ばす。
彼女が何を言っているのか訳が分からない。
だけど、何かを知っている。
初めて、夢の中で、会話が出来る人に出会うことが出来たから。
だから、必死に手を伸ばすけど――、女性は――。
「はっ!」
そこで手を天井に伸ばしたまま、私は目を覚ました。
心臓の鼓動は、恐ろしく早くて――、着ていたパジャマはびっしょりと汗で濡れていた。
荒い呼吸を整えながら壁掛け時計を見る。
時刻は、午前6時少し過ぎ――、隣を見ると優斗が寝ていた。
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