第484話
「すっごく! 似合っているよ! 優斗! じゃなくて、凛子ちゃん!」
「いや、さすがに着ぐるみはないだろ……」
部屋に戻ってソファーの上に寝ころんだ俺は、冷やかしてきた都に言葉を返す。
「それよりも、机に向かって何をしているんだ?」
「え? 授業中に、宿題出されたでしょ?」
「……そういえば、そんなこともあったな」
「優斗、今日はズルしていたけど、宿題はどうするの?」
「……な、何を、言っているんだ?」
「だって、どう考えても優斗が答えられるような授業内容じゃなかったもの。何かズルしていたんでしょ?」
「都」
「何?」
「俺を今までの俺とは思わないことだな」
「ふーん。それで、実際はどうなの?」
「企業秘密だ」
俺はカバンの中からノートと教科書を取り出す。
次に伊達メガネを掛けたあと、眼鏡のフレームのボタンを押して起動するが、時間外と画面に表示される。
これは……、まさか……。
東大教授陣が24時間、サポートに入ってくれているわけでは……。
チラリと都の方を見る。
「……な、なあ、都様」
「何?」
「ちなみに、宿題範囲はどこからどこまででしょうか?」
「授業聞いていたんじゃないの?」
「……今日、初めて、学校に登校したから、わたし分からなくて……」
「そういう気持ち悪いノリいいから。まったく、ズルばかりしていると、いつまで経っても勉学は身につかないからね」
「はい……」
都に教えてもらい何とか宿題を消化していく。
「なぁ、都」
「何?」
「毎日、勉強しているのか?」
俺はチラリと都の部屋にある高そうな壁掛け時計に視線を向ける。
時刻は、午後11時過ぎ。
「当たり前よ? 毎日、予習と復習しないと駄目でしょう? 優斗が、毎日しないと駄目だって前に言っていたよね?」
そんな事あったか? 記憶にないな。
まぁ、たぶん喰われたんだろう。
「そうだな……」
「…………」
「どうした?」
「ううん。何でもないわ。私、お風呂入ってくるわね」
都が部屋から出ていったあと、ソファーに寝転がる。
「何と言うか、今日は一日、色々あったな……。まさか、この姿で都の家に泊まることになるとは――」
意識を落して、休んでいたところでドアが開く音が聞こえてくると共に意識を覚醒させ、薄っすらと瞼を開けたままドアの方を見れば、パジャマを着た都が部屋に入ってくるのが見えた。
どうやら風呂から上がったようだ。
時刻は、午前2時少し過ぎ。
3時間近く風呂に入っていたのか?
風呂だけ入っていたにしては、時間が掛かり過ぎな気がするが……。
「もう、優斗。ソファーで寝ているし」
俺は、ソファーで寝たふりをしたまま、同じ布団で寝れる訳がないだろ? と、心の中でツッコミを入れた。
しばらくは、俺をベッドに移動するか考えていたみたいだが、都は諦めて部屋から出ていった。
そして、しばらくしてから――。
「お父さん、優斗をベッドまで運んで」
「分かった」
どうやら、父親を連れてきたみたいだ。
「し、しかし、いいのか? 勝手に触って――」
「優斗だから問題ないから」
「そ、それは、そうだが……、いまは生物学的に――」
「細かいことはいいの」
「仕方ない」
溜息をつくと、俺をベッドまで運ぶ都の父親。
「女になると体重も変わるモノなのか? 質量保存の法則とか――」
「さあ? 優斗に聞いてみれば? 起きてからだけど」
「いや、別にいい。それより早く寝なさい」
「お母さんに怒られた?」
「今も絶賛怒られ中だ。まったく――」
「お父さんが悪いんだからね」
「説明の仕方で違ってくるだろう? 神から与えられた力と、自身で得た力では、その方向性もまったく違うからな」
「はいはい。言い訳はいいです。もう、お父さんは出ていいから」
「分かったから、押すな」
バタンと閉まるドア。
「ふぁーあ。私も寝よ」
都が布団に入ってくると、俺に抱き着いてきて、しばらくして寝息を立て始めた。
どうやら、俺は抱き枕として採用されたらしい。
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