第482話
身バレしていないのは助かったが、それよりも現代に舞い降りた聖女様とは一体……。
「これって、ゆう――、四条さんなのかしら?」
横から修二の携帯電話を奪い取った静香さんが、聖女という言葉が出てきた当たりで鼻息を荒くしていたが、まさか携帯を奪い取ってまで画像をチェックするとは思わなかったが――、
「ねえねえ。都! 髪と瞳の色は違うけど、容姿から体型までそっくりよ!」
「ほんとだ……」
興味深々な静香さんとは違って、都は呆れたような表情を俺に向けてくる。
お前は、何をしているんだ? と、言う意図が込められているのがヒシヒシと伝わってくる。
「えっと……、この姿では――、人違いです」
「たしかに髪と瞳の色が違うからな」
否定したところ、簡単に信じる修二。
ちょろいな、コイツ。
「あなた、この映像の子って聖女様って言っていたけど、何をした子なの?」
「ああ。私の秘書を助けてくれたばかりか、諏訪市で無料同然の診察料で、多くの病人や怪我人を救った方だ」
修二の説明に「へー」と、溜息を洩らしながら俺を見つつ、呟く都。
その後は、修二が、如何に俺が行った医療行為を力説していく。
「――と、いう訳だ。本当に聖女様は、すごいものだ」
「そうなのね」
10分ほど、修二の話を聞いていた静香さんが両手をパンパンと叩くと、
「たったまま話してもなんですし、夕食の準備も出来たようですから、食堂に行きましょう」
静香さんの提案で、俺達は玄関から食堂へ。
食堂に到着したところで、それぞれ椅子に座ったところで、すぐに前菜が運ばれてくる。
どうやら、今日はフランス料理らしいな。
「ごめんなさいね、四条さん。夫の話が長くて――」
「いえ。そんなことはありません。それよりも聖女様って、素晴らしい方なのですね」
「もちろんです! 分け隔てなく治療行為をし、どんな病も完治させていたのですから」
「ただ――、彼女は、一日で赤十字病院から姿を消したそうで、今はどこにいるのかは、関係者以外は知らないそうです」
「まあ、そうなんですの? たとえば――」
そこで俺は遺伝子を操作し、髪の色を黒から銀髪に――、瞳の色を黒から赤眼へと変化させる。
「ここに居たりするかも知れませんね」
「――なっ!」
修二が目を丸くする。
都と静香さんは、驚いたような表情で俺を見てくる。
「本当に、色を自由自在に変化させる事が出来るのね」
静香さんに向けて微笑む。
「ま、まさか……。本当に聖女様?」
その修二の言葉に俺は頷く。
「まさか、聖女様と呼ばれるようになるまで人気になっているとは思いもしませんでした」
「いえいえ。そ、それにしても……聖女様が、どうして、このような場所に?」
「え? だって――」
俺は、姿を元の俺へと変化させる。
「ふはははは! 桂木優斗! 推参っ!」
「!?」
女子高生のブレザーを着たまま男へと変わった俺を見て、前菜を口に運んでいたフォークをテーブルの上へ落とし、そして瞼を大きく開けたままフリーズする修二。
「あらあら、まぁまぁ――、四条さんって、優斗君だったのね!」
「なん……だと……」
修二に、俺の事を褒めさせるだけ褒めさせて、そして俺の正体を暴露して修二の精神にダメージを与える。
それが、静香さんの考えた作戦だったが、どうやら上手くいったようだ。
修二が完全に固まったままだ!
それにしても、このセリフはずかしいな……。
何が推参なんだか……。
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