第474話

 1限目の授業も終わり、副担任から担任へと昇格した宮内梓に付き添われて、教室へと向かう。


「四条さん」

「はい」

「少し、騒々しいクラスだけど、みんないい子だから、学校生活を楽しんでね」

「ありがとうございます」


 そう俺は言葉を返しながら、歩く。

 教室前に到着したところで、先に教師だけがクラスに入っていき、簡単な事情説明をしたあと、廊下で待っていた俺にクラスに入ってくるように手招きしてくる。

 カバンを両手に持ったまま、優雅に後宮を歩く令嬢のように振る舞い教壇の近く――、教師の隣に立つ。


「四条さん、説明いいかしら?」

「はい」


 俺は一呼吸入れたあと――、


「四条凛子と言います。今までは、体調が優れないこともあり、御学友の皆さまと勉学を共にする事が出来ませんでした。これからは、しばらくの間、御一緒させて頂ければと思います」


 もちろん笑顔を忘れない。

 俺の自己紹介に――、


「うおおおお。超絶美少女キター」

「こ、これが大和撫子……見た目は完璧デュフ」

「う、美しい……」

「凛子さーんっ!」

「こちらに! こちらに目線を!」


 男子たちからは好評のようだ。

 まぁ、見た目はいいからな、見た目は――。

 たいして、女性グループからは、俺を値踏みするかのような視線が……。

 まったく、この辺は異世界と同じと言ったところか。


「それでは四条さんの席は、すぐには用意できなかったから、桂木優斗君の席でいいかしら?」

「待ってください! 先生! そこは優斗の席です!」

「桂木君は、一ヵ月間、勉強のために山へ修行に行くと山城理事から報告を受けています」

「え? 山へ修行? 勉強なのに?」

「はい。山城理事長から、そのように報告を受けています。おそらく合宿か何かなのでしょう」

「そんな……(優斗、明らかに私を避けているわよね?)」

「四条さん」

「はい」

「あそこに空いている席に座ってもらえる? すぐに席を用意するから」

「分かりました」


 俺は、自分の席に座り、カバンからペンケースとノートだけを取り出しカバンを机横に下げたあと、ペンケースの中から伊達メガネを取り出し、装着したあとフレームの凹凸部分を軽く押すと、眼鏡のレンズに数字が表示されたあと、正常に起動する。


「『こちら、四条。聞こえていますか? どーぞ』」

「『聞こえています。当主様』」

「『勉強のバックアップとサポートを頼みます』」


 流石に桂木優斗と同じ勉学レベルだとバレる可能性がある。

 そこで米軍御用達のシステムを運用し、授業のサポートを雇った東大教授に任せる事にしたのだ。


「『感度良好。これから、サポートに入ります』」

「『了解』」


 しばらくしてから、授業が始まる。

 そして2時限目が終わったところで、回りに男子たちが集まってきた。

 理由は、想像はつく。


「四条さん。彼氏は居ますか?」

「いません」


 即答した。




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