第472話
千葉県警察本部に到着した後――、「お嬢様。千葉県警本部に、どのようなご用件があるのですか?」と、女性のボディーガードが聞いてくる。
俺は、一瞬、考え――、
「お父様に書類を持ってきたの。だから、待っていてくれるかしら?」
そう言葉を返す。
その俺の言葉を、そのまま受け取るほど、思慮は浅くはないのだろう。
「お嬢様。警護の為についていきます」
「必要ないわ。ここは警察だもの」
「ですが……」
「問題ないから。それと県警本部の前で停まっていると変な勘繰りをされるから、少し離れた場所で待っていてくれるかしら?」
「……分かりました。それでは、お嬢様、何かありましたら、すぐに連絡をください」
「わかったわ」
車から降りたあと、千葉県警本部の入り口へ向かう。
途中で、立っていた警察官が俺へと視線を向けてくると、話しかけてきたが、神谷へ連絡をして通れるようにしてもらう。
県警本部に入ると警察官や関係者が、場違いな俺へと興味を含んだ視線を向けてくるが、俺は無視したままエレベータ―に乗り、千葉県警本部内にある俺の部署へと到着する。
「桂木警視監。突然、来られてどうかされましたか?」
言葉とは打って変わって落ち着いた様子で、話しかけてくる神谷を横目に、俺は自分の椅子に座る。
「神谷。お前が手配したボディーガードとかメイドは、どうなっているんだ? 一々、俺の行動を聞いてきて息が詰まりそうなんだが?」
「それは一般的なお嬢様という設定で、雇っていますので、気にしないでください」
「俺にボディカードは必要ないと言う事くらいは分かっているよな?」
「分かっていますが、男の体に戻れない以上、しばらくは偽りの身分で過ごすしかありませんから」
「つまり男に戻れれば問題ないと言う事か?」
「はい」
「なるほど……。なら問題は解決だな」
「――え?」
「もう力は回復した。男には戻れる」
「……」
俺の返事に神谷は目を見開いたあと――、
「桂木警視監」
「何だ?」
「学校には、桂木優斗を監視する目的ということで、何の試験も受けずに、四条凛子という架空の戸籍の人物を入学させ桂木優斗としてテストを受けさせることが出来ました」
「まぁ、そうだな」
「そして、学校との契約期間は一ヵ月と言う事になっています」
「ふむ」
「ですので、一ヵ月間は、桂木優斗ではなく四条凛子と言う事で学校に通ってもらわなければ困ります。途中で契約内容を反故にする行為は、さすがに超法規的措置が取れる個々の部署でも無理がありますので」
「なるほど……」
契約なら仕方ないか……。
「だが、ボディーガードについては何とかならないのか?」
「そちらにつきましては1時間1万円で、一年間、雇っていますので、仕事を解雇されると言う事になりますと――」
「金だけ払って他の仕事をさせると言う事は出来ないのか?」
「契約した会社側もプロですから。何もさせないというのは――」
「……逆に苦痛ということか」
「そうなります」
「つまり、あと一ヵ月間近くは、俺は女装したまま学校に向かわないといけないということか……」
「そうなります」
「はぁー。頭が痛いな」
「あの桂木警視監」
「何だ?」
「力を取り戻したということですが、どうやってですか?」
「何を不思議そうな顔をしているんだ? 普通に飯を食ったからに決まっているだろ」
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