第470話 神楽坂都side(7)

「都が、朝のホームルームに遅れてくるなんて珍しいな?」


 携帯電話を弄りながら、話しかけてきた純也。


「ちょっと、気になる事があったの」

「優斗のことか?」

「どうして優斗のことなの?」

「――いや、どう見ても優斗関係でしか都は動かないだろ」

「そ、そんなことないし……」

「ふーん」


 何だか、少しムカつく。

 

「それよりも、純也は、さっきからスマホを弄って何をしているの?」

「実はさ」


 険しい表情になる純也。

 何か詐欺にでもあったの? と、一瞬、思ったけど……、そんなはずもないよね。と、心の中で思い直し、純也が差し出してきたスマホを受け取る。

 純也のスマホには、女の子のスクリーンショットが表示されていた。

 それは、ネットに保存されているようで――。


「これって……」

「ああ。凛子さんの画像だ。誰かが隠し撮りしたらしい。それで、それをSNSでアップして拡散されている」

「へー」


 この子が、凛子ね……。

 大きな円らな瞳に、鼻筋の通った整った顔つき。

 女性らしい丸みはあるけれど、ハッキリとした凹凸のある体つきに、日差しを浴びているのか、黒髪が光を反射していて、同じ女性から見ても羨望の的になるほど美しい。


「どうだ?」

「悔しいけど……、レベルは高いわね」


 もはやレベルが高いというか、そんな次元は突破している。

 普通にアイドルをしていてもおかしくない。


「凛子さんをSNSにアップした人物、イイネが20万くらい付いているんだよ。心配にならないか?」

「私は別に――」

「だから、俺、考えたんだ」

「何を?」

「20万もいいねがつけば、必ず変な勘違いな男が凛子さんに言い寄るに決まっている! だから、俺が凛子さんを守らないといけないって!」

「へー。でも、どうやって守るの?」

「そこは、式神を使って守る」

「そんな事のために力を使っていいの?」

「将来、結婚を誓い合った仲同士だから、問題ない!」

「結婚?」

「ああ。あれは、暑い日差しの夏――、俺は出会ったばかりの彼女に――、もう会えなくなると哀しそうに、俺に告げたあの日に、凛子さんに行ったんだ。将来、一緒になろうって!」

「それって、5歳の時に?」

「ああ。最初は、彼女も何を俺が言ったのか分からなかったみたいだったけど、俺は、友達の延長みたいなモノだと言ったら、すぐに納得してくれた!」

「それは詐欺なのでは?」

「同意はとった。――でも! 俺のことをどうでもいい奴だと思っていたら、俺の名前がすぐに出てくる事なんてないだろ? つまり、凛子さんは今でも俺のことを想ってくれている! つまり相思相愛! 凛子さんの豪邸まで式神を付けて家を確認したのも合法!」

「……え!? 式神を使って、その女性の後をつけたの?」

「ああ。怖がらせてもいけないと思って、ここ数日、凛子さんにはボディーガードの役目も含めて前鬼をつけている。最初は、渋っていたが今は……」

「今は?」

「渋ってる」

「それは、そうよね。それ、完全にストーカーよ? さすがの私もドン引きだわ」





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