第469話 神楽坂都side(6)
朝食の時間、胡桃ちゃんの今後のことについて、お父さんは話してきたけど、結局、話は昨日の焼き回しで、堂々巡り。
お母さんは、横で聞いているだけで、優斗が化け物呼ばわりされた事に関しても何も言わなかった。
「都、待ちなさい」
「もう、お父さんなんて嫌いっ!」
カバンを片手に家を出て、優斗の家に向かう。
インターホンを鳴らすと出て来たのは、エリカちゃん。
「都? どうかした?」
「優斗は?」
「マスターは、事件で家を留守にしている」
「そう……。ねえ、エリカちゃん」
「どうした? 都」
「事件って、どんな事件なの?」
「それは、民間人の都には言えない。まだニュースにもなってない事を話すことはできない」
「……」
思わず私は無言になってしまう。
完全に蚊帳の外の扱い。
私には優斗しかいないのに……。
少し前までは、優斗には私しかいなかったのに……。
どうして? どうして? どうして? そんな疑問が胸中を埋め尽くしていくけれど、答えなんて出ない。
理由は簡単。
私の身分が、学生に過ぎないから。
何の決裁権も、何の身分もない。
優斗みたいに超常的な力を持っているわけでもないし、警視監という肩書を持っているわけでもない。
よくよく考えてみれば――、
エリカちゃんだって、純也と一緒で神社庁の人間で特別な力を持っている。
白亜さんって、妖怪で空弧と呼ばれる強力な妖怪。
胡桃ちゃんは、優斗の身内。
私は、優斗の幼馴染以外には何もない。
私だけが違う……。
でも、諦められない。
「ねえ! 優斗は、家には帰ってきているのよね?」
「答えはノー。マスターは、現場から直接、学校に行っている」
「そうなの?」
「うん。エリカも、数日、マスターには会っていない」
「そう……なんだ……」
渋々、私は引き下がる。
エリカちゃんは、本当の事しか言わないから。
少なくとも、両親よりは信用している。
「優斗から電話があったら、私にも電話するように言ってくれる?」
「任された」
優斗の家から離れたあとは、私は何もできない――口だけで、何も優斗のために出来ないことに落ち込みながら学校へと向かった。
教室に到着して、テスト時間まで椅子に座ったまま机の天板を見ていると――、
「なあなあ、知っているか? 保健室に、すっげえ美人が入っていったんだぜ!」
そんな声が聞こえてきた。
それと同時に私は椅子から立ち上がっていた。
だって、優斗が保健室でテストを受けに来ているのなら、優斗に会う事ができるから。
どうして、そんな簡単な事に気が使ったんだろう。
保健室前に到着した私は、扉をノックしようとした所で手を止めた。
理由は中から声が漏れていたから。
「四条さん。テスト勉強の方はどうですか?」
「それは、住良木先生も理解されているのではなくて?」
「(四条? それが、純也が言っていた女子生徒の名前?)」
私は、優斗の姿を確認する為に、そっと音と立てないようにしてドアを開ける。
すると、椅子に座っている女の子の姿が見えた。
横顔だけだけど、信じられないくらい綺麗だった。
スタイルも、女性が見とれるほど美しくて、美少女と言ってもいい。
「(……でも、どこかで見たような……)」
心の中でツッコミを入れつつも、私は女子生徒を注視する。
そこで、チャイムが鳴る。
「(いけないっ!)」
私は急いで教室へと向かった。
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