第457話
――翌朝の校門前、リムジンから降りると目の前には純也が居た。
「おはようございます。凛子さん」
「……ごきげんよう」
コイツは、俺のストーカーか何か何かなのかな?
それとも、俺にボコボコにされたから嫌がらせで付き纏っているだけなのか?
どちらにせよ、霊視の力を持つ純也が、俺の正体に気が付かないはずはないんだが……。
「凛子さん」
「……」
「凛子さん」
「……」
「凛子さん?」
「――あ、はい……」
やべー。昨日、作ったばかりの名前だから、体調不良の上、寝不足と言う事もあって、全然反応できなかったわ。
「やっぱり、体調が悪いんですか?」
「はい。そんな感じです。それと、純也さんは、テスト期間なのでは? テスト勉強しなくてよろしいのでしょうか?」
「勉強は、しなくても何時も学年トップに近い成績とれているので大丈夫です!」
余裕の笑みを向けてくる純也の顔を思いっきり殴ってやりたい。
「そうですか。それよりも、そろそろ時間ですよ?」
俺はチラリと校舎の壁に立てかけられている巨大な時計へと視線を向ける。
そこには午前9時10分と表示されていた。
テストは9時30分からなので、俺を何時までも相手にしている余裕はないはず。
「分かりました。――では、テストが終わったら、あとで保健室に行きます。――あ、あと、桂木優斗って奴もテスト受けていますよね?」
「えっと……そんな殿方も居たような気がします」
「殿方……。凛呼さんは古風なんですね」
「――いえ。そうでもありません……。それでは、桂木優斗さんには、純也さんが会いに来ると伝えておけばいいですか?」
「――いや、大丈夫ですよ」
……大丈夫? 何が大丈夫なんだ?
「そのうちテキトーに話をするので」
「そうですか……」
「あ、でも、たぶん、都が行くと思うので、その時は席を外してやってください」
「分かりました」
まぁ、俺は居ないがな。
それにしても、純也の俺への扱いが雑過ぎるというか、他に目的があって保健室に来るとしか思えない。
まぁ、こいつも悪い奴ではないんだが……、
手を振って昇降口へと走っていく純也の後ろ姿を見送ったあと――、俺は溜息をつく。
今日は、登校中の生徒達が居た時間帯に登校したこともあり、回りを歩いていた学生たちの視線が俺に向けられていたからだ。
ただでさえ、車通学で目立つというのに。
「あの子、すっげえ可愛いんだけど……」
「サッカー部のエースの峯山君とどういう関係なのかしら?」
「モデルみたいだな」
「ちょー美人」
「純也の彼女かよ!」
「見て見て、足とか腰とかすっごい細い」
「リムジンで登校とか、何かの漫画かよってレベルだよな」
「レベルって言えば顔面偏差値とか高すぎね?」
などなど――、腐るほど俺への話題がこれ見よがしに聞こえてくる。
「はぁー」
メンドクサイな。
さっさと男に戻って、今の現状を打破しないと厄介なことになりそうだ。
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