第446話
「そのように驚くことかの? 鏡花よ」
「驚くわ。だって、白亜様は、齢500年を超える大妖怪……。人が主人となり契約するなんて能力的にも……」
「だから、妾よりもご主人様の方が遥かに強いと言っておる」
「……強いとは思っていたけど、まさか白亜様よりも強いなんて……」
「妾なぞ足元にも及ばぬほど、ご主人様は強いのじゃ。気が付かぬか? 妾の妖力が神の域に達していることに」
「――え? そ、そういえば……、まったく妖力を感じないわ」
「あれじゃな。鏡花と妾との間で力の差はありすぎるから感じとることが出来ないのだ」
「……もしかして、白亜様は空弧の領域に?」
「うむ」
「…………そのような話は聞いては――」
住良木の視線が、台所に立っているアディールへと向けられる。
「そ、そうですか……(意図的に報告しなかったのね……)」
「態々、報告する義務はなかろう?」
「……はい」
「さて、話は、これで仕舞いかのう?」
「いえ。桂木殿に会わせて頂きたいのですが……」
「何か緊急なことでも?」
「…………それは」
言い淀む住良木の様子に――、
「まぁ、ご主人様が起きて来られるまで、ここで待つといい。(つまり、何か確認したい事がある……、そういうことかの? ――と、言うことは、ご主人様にとっていい事ではないという可能性もあると……)」
「ありがとうございます」
「はぁーあ……、ねみい……」
白亜と住良木。
二人が会話をしている間に、アラームで起こされた桂木優斗がリビングに入ってきた。
その目は、疲れが取れていないと言う事もあり半分死んでいた。
「おー。住良木か。どうした? こんな朝早く」
「――え? か、桂木どの?」
「何を驚いている。俺だ、おれ」
トランクスとTシャツだけの姿の絶世の銀髪の美女が、頭を掻きながらリビングのソファーの上に倒れ込むようにして横になる。
それを見ていた住良木鏡花は、口を開けたまま、何が起きたのか理解出来ずにいた。
「やべぇ、まじで眠い。今日、テストだっていうのに、俺、やべぇかもしれない……」
「あの、桂木殿?」
「どうした? もしかして奇跡の病院の件で来たのか?」
「――い、いえ。そういうわけでは……。それよりも……本当に桂木殿で?」
「当たり前だろ。どこからどうみても桂木優斗以外の何に見えるというんだ。おかしなやつだな」
「どう見ても別人にしか……」
「あー」
住良木の言葉に、桂木優斗は、少し沈黙したあと……、自身の腰まで伸ばしていた銀髪を見て――、
「そういえば、昨日――、治療行為で疲れ果てて、女装したまま、男に戻らずに寝ていたな!」
「――じょ……女装?」
「ああ。昨日、色々と治療していたからな。俺の正体が一般人にバレると面倒だろ? 日本政府側も、超常現象に関しては極秘裏に片付けたいという意向が見え隠れしているし……。そういうこともあり女装して治療する事にしたんだよな」
「……どう見ても、女性にしか見えませんが?」
住良木の目から見ても――、否! 全地球人類の目から見ても、住良木の視線の先――、ソファーの上で横になっている人間は……、桂木優斗と名乗る人物は、上から下まで体のシルエットから声質まで女性そのものであった。
しかも、傾国の美女と言われても誰もが納得できるほどの超S級美女。
人によっては女神と崇拝するレベル。
「ああ。遺伝子レベルで女装しているから、バレてないだけで、実際は――」
「遺伝子レベル……? 桂木殿。それって、もはや女装ではないのでは……」
「いや、明らかに女装だろ? 服で女装するのと遺伝子を弄って女装するのは同じようなものだし」
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